||| アイチくんとかみさま
(捧げ物)
「青色は好き。でも君は嫌い」
笑いながらナマエさんはそう言った。どうして僕を嫌うの、どうして僕を認めてくれないの。ナマエさんも弱い僕が嫌いなの。
そう思って拳を握り締めれば、つんとした痛みが僕を襲う。
僕はナマエさんの好きな、青色を持っている。誰よりも青く綺麗で、誰よりも、彼女が好き。だから僕は、彼女に認められる程の物を持っているはずなんだ。
けれど、それでもなお彼女は僕を認めてくれない。僕という青色を、嫌い続ける。
こうして一対一で話し合っているにも関わらず、目の前に立っているにも関わらず、彼女は僕に目を向けない。彼女は見ないふりをする。
どうしてなの、どうして僕は報われないの。
好きなだけなのに。それ以上でもそれ以下でもない僕の感情は、頭の中を暗い色で塗り潰してゆく。
「だってやなんだもん」
「どうして、ですか」
「わたしね、先導アイチが怖い。だから嫌い」
「怖い…なんて……」
真っ白の綺麗な笑み。毒気のない純粋な言葉は、ゆっくりと、僕の心にナイフのように刺さってゆく。どうしてそんな、綺麗な顔で、綺麗な声で、僕の心を殺してゆくの。僕の感情を、壊してゆくの。
嫌わないで。恐れないで。そう言えたら、きっと楽だ。でも僕は何も言えない。それを告げて、また、嫌われるのが怖いから。
僕はどうしようもなく臆病だ。自分から動く事ができない、臆病者だ。
僕はヴァンガードに触れて成長したと自分でも思う。積極性も出て、自分のやりたい事に気付けて、きっと、僕は今人生が楽しい。
それなのに、僕は、ナマエさんを前にすると積み重ねたそれらを全て失ってしまう。
――まるで彼女は、全てをリセットしてしまう神様のようだ。
「先導アイチくん」
「……はい」
「私はね、君を好きにはなれないよ」
「……そう、です…か……」
≫
back to top