text | ナノ
 ||| カオスブレイカーに強請る


(落ちない)

「こわれちゃった、あたらしいのちょうだい?」

微笑みながら物を言う娘御に、盛大なため息を吐いたのは記憶に新しい出来事だ。彼女は我らリンクジョーカーの先導者という立場でありながら、まだ知らない物事の多すぎる幼い少女であった。
それを選定したのは私ではない。だがしかし、それを管理する役目を与えられたのはこの私。
暇を潰す為に作った終末兵器を最も容易く、意図せず破壊してしまうその手腕は恐ろしい。だがしかし、それは、我々が制御できなければ純粋な脅威以外の何者でもない。

「……姫君、壊さない努力は出来ないのですか」
「ナマエ、おひめさま?」
「質問に答えなさい」
「ナマエこわしてないよ!あれがぜんぶ、かってにこわれちゃっただけ!」

ああ、此れだから人間の子供というのは。
ほんのすこしの苛立ちを感じながらも、私は言葉を続けます。止めたところで、何か良い変化が起きる筈ないのですから。子供の脳とは都合の良いように出来ているのです、私が返答を止めた時点でそれは彼女にとって肯定と見做される。
「姫君は本当に愚かしいですね」
「おろかってなに?」
「罵倒されているのですよ」
「ばとうってなに?」
純粋な目で私を見上げるその姿の、なんと悍ましい事!ああ、これだから人間は嫌いなのだ。面倒なのだ。
手に持つ刃でその首を切り裂けたら、それはどれ程幸福な事だろうか。そう思いはしても、私は彼女に手を挙げる権利を持ち合わせてはいない。ええ、それが先導者たる存在の"絶対的権利"なのだから。

「ねえ、おもちゃちょうだい?」
「24時間と保たない玩具がそれ程欲しいのですか」
「だってやることがないの」
「天井のしみでも数えていなさい」
「しみないよ」
「では焦げ跡でも数えていれば良いでしょう」


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