||| ファルルちゃんと底辺
ナマエはプリズムボイスを持っていない。
ユニコンは、ナマエの事を底辺だって言ってた。駄目な子だって、関わっちゃいけないって、何度も何度も言ってた。
けどファルルはそう思わないの。ナマエはいつだってへんな顔だけど、いつだってとっても綺麗な目をしていた。どんなに大変なレッスンでも、どんなに辛いお仕事でも、一度も嫌だって言ったことがない。ファルルはそんな、一生懸命なナマエが大好き。
ほんの少しの時間お話しするだけのちっちゃな関係。けど、ファルルはその時間がいつも楽しみ。ナマエも、楽しみだって、思ってくれてるはずなの。
ユニコンとナマエから貰った言葉と、周りの皆から学んだことがファルルの全部。
からっぽのファルルのなかに、ナマエがいっぱい詰まってる。それってすごく、凄く不思議なことでしょ。
アイドルは笑っていなくちゃいけないの。だからファルル、ナマエに笑ってほしいな。
いつか一緒にチームを組もうよ、ユニコンは怒るかもしれないけど、ファルル、ナマエと一緒ならいっぱいいっぱい踊れるよ。いっぱいいっぱい、いーっぱい笑えるよ。
――だから、わらってほしいな。ファルル、ナマエのその顔、きらい、だよ。
「すき、だいすき、あいしてる」
「ふぁるる、ちゃん?」
「けっこんして、ファルルの為にお味噌汁つくって、月がきれい」
「あ、あの」
「寝て、キスして、いっしょに相撲?」
「どすこい……」
「ナマエ、ゲンキ、出た?」
ちょっとだけ首を傾げると可愛いんだって、ユニコンが言ってた。ナマエは可愛いファルルが好きって言ってたから、ファルルはいつでもナマエの為に可愛くしてるの。
可愛いファルルがナマエは好き、ファルルはいつでもナマエが好き。ファルルが可愛いとナマエは笑ってくれるから……ええと、なんだか分かんない。けど、とにかく、ファルルはナマエの為にかわいくしてるの。そうしたら、ナマエは笑ってくれるから。
目からお水をぼろぼろ零すナマエは、すっごくかわいいの。ファルルもそうやったら、可愛くなれるかな?ナマエに笑ってもらえるかな。
「ファルル、ナマエ、きらい」
「きらい……?」
「きらい。ナマエが、ファルルの事みて、笑ってくれないのが、きらい」
ファルルは、笑ってるナマエがすきなのに。
"花が咲いたような笑顔"だって、ナマエの事知ってる人はみんな言うの。ファルルはナマエの"花が咲いたような笑顔"が大好き。だから、もっともっと、見ていたい。ファルルだけが、ずうっとナマエのこと見ていられたらいいのにって、時々思うの。
それって、いじわる、かなあ。
「笑ってないナマエは嫌い、けど、ファルルじゃない人に笑うナマエも嫌い。ファルル、いじわる?へん?」
ファルルの気持ち、ユニコンにいったら、怒られちゃうかな。
ユニコンに隠し事するなんて、ナマエが初めて。ファルル、悪い子?それとも、いい子?
「……わたしのせい、だよね」
「ナマエ?」
「ごめん、ね、ごめんね」
「ナマエ……」
ゴメンネってなあに?言ったら、いいことある?
ナマエはゴメンネっていうたびに、凄くへんな顔をするの。可愛いけど、可愛くない。ファルル以外の人に、みせたくない。
ファルルが名前を呼ぶたびに、ナマエは小さく蹲るの。
そんな恰好じゃ、かわいくないよ。もっと堂々としてなきゃ、神アイドルに、なれないよ。
ファルル、ナマエと二人で、一番上に立ちたいのに。
ファルルはワガママ?だめなこ?いけないこ?
「ナマエと一緒が、いいのに」
わらって、よお。
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