||| あんたの歪んだ本音を暴きたい
唇に感じる鈍い暖かさはなんだろう。
ほんわかとして少し甘いような。
ここは外だから少し唇は冷たくなっているのかも。
じゃあ風?
そんなことありえない。
ならこのあったかいの、なんだろう。
ぱち。
泡のはじける音、火花が飛ぶ音、瞳が開く音。
不思議な効果音と共に彼女の視界に入り込む自分は綺麗な青の目。
綺麗だなあ、そう思って彼はそっと右手を輪郭へ滑らせる。
「あ・・・」
「おはよう、ソルくん」
彼の綺麗な右手をそっと掴む。
冷たいような暖かいような、不思議な体温に安心がする。
そのまま手を首元まで滑らせればびくりと指が震えた。
「ソルくんの手は、あったかい」
「ナマエは死んでるのかと思うほど冷たいけどな」
まあ酷い。本当のことだろ。
鳥の鳴き声。草木の音。
長閑で柔らかくも暖かい、ここはとても素晴らしい場所。
空はどこまでも青いのが定説。
宇宙から見た地球は青いんだって。
じゃあ魔界から見た人間界は何色なのかしら。
人間界から見た魔界は何色なのかしら。
青い色なら、ソルくんの目の色とお揃いね。
赤い色なら、レイクくんの目とお揃いだわ。
ああ、世界はこんなにも綺麗な色で溢れてるの。なのにどうして?
今わたしが見てる世界は灰色だなんて、こんなこと。
色は見えない。何もかも反射する。
寂しくて、仕方が無い。
ねえ、どうして泣いているの?
笑いながら泣くなんて器用なのね。
そうやって笑い飛ばしたいのに笑うことができない。
ゆっくり、青に赤が侵食してゆく。
見えない視界で、何かが変わる。
ああ苦しい。
この先の言葉を聞いてはいけないような、嫌な苦しさ。
聞かなきゃいけない苦痛は、どうしたら消えるのかしら。
「あのな、ナマエ」
「うん」
「あのな、あのな」
ぽたぽたと涙が頬を伝う。
ソルくんの涙は体温と同じで暖かい。
頬に添えた手は暖かいのに冷たく感じる。
ぽたぽたぽた。
水の音雨の音涙の音。
泣かないで、なんて言っても伝わらないの。
聞いて、聞いてと伝えても声になってくれないの。
赤い。
ソルくんの目は、とっても赤い。
赤いおめめがぐるぐるでぐちゃぐちゃ。
ソルくんの赤だけ、灰色の世界にぽつり。
ああ、綺麗な色なのに勿体無い。
「ごめん、ごめんな。」
さっきから謝ってばかり。
どうして?わたし、ソルくんのこと好きよ。
だから泣かないで、謝らないで。
わたしが泣いてしまいそうになるの。
心がね、痛いの。寂しいの。
だから、ねえ泣き止んで?
貴方の笑ってる顔が、見たいのに。
貴方を笑わせるとこも、貴方の手を握り返すことももうできないの。
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