||| ルキウスくんを引っ叩く
先導者に触れたら引っ叩かれた。何を言っているか分からないと思いますが僕にも…え、分かる?そうですか、残念です。けど僕には現状が理解出来ません。
ぽかんと口を開けて、間抜けな顔を見せる僕に、先導者は怒ったような驚いたような顔で、僕を睨むのです。
そんな顔も美しいですだとか、綺麗ですだとか、まあ、そう言ったお世辞にも似た本心を言える程僕は頭が悪くない。
「申し訳、ございません?」
疑問符を含んだその言葉に、先導者は再び僕の頬を叩くのです。少し痛いですが、興奮したのは、また秘密の話。
何かお気に触ることをしてしまったでしょうか。小首を傾げたままそう発すれば、また一発と叩かれる。芯を捉えたらしく今度はぐらりと脳に来ました。これはこれで、また。
「ありえない、変態!」
どうやら僕は、気付かぬうちに何かやらかしてしまった様子。 けれど僕は正直、変態と称される行為を、僕はした記憶がありません。
叩かれたは頬にそっと手を添えれば、じわりと広がる痛みに口元がニヤけるのを感じました。先導者が僕に与えて下った、痛み。僕はとても幸せだ。
「……きもちわるい…」
そんなゴミを見るような目で僕を見ないでください。僕はいまとても幸せなのですから仕方がありません。許してください。
「貴方が好きなのですから、仕方がありません」
「やめてよそれ」
すぐに返された言葉に、僕の心は下を向きます。ああ、折角の本心なのに、残念な結果。これで何敗目でしょうか。
好き、という気持ちが僕はどうも分かりません。だから、僕は地球人の真似をする。
「すきです」
そう言葉にすると、地球のヒューマンは幸せになれると聞きました。
「あなたのことが」
告白とは、何度も繰り返すと効果があると、図書館で学びました。
好きです。僕の中に渦巻くこのどうしようもない好きという気持ちが抑えられなくて、言葉にして、それても伝わらなくて僕は――。
「だから、気持ち悪いって、言ってるじゃない」
そして僕はまた頬を叩かれる。最早頬よりも心が痛みます。そうして暴力を振るわれるのは一向に構いません。
僕は、頭は悪くありませんが、賢くはないので、貴方の気持ちが分からないのです。恐らく、至らない僕が悪いのでしょう。
貴方の苛立ちを理解できない僕が悪い。貴方の隣に居座る僕が悪い。悪いの、です。
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