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 ||| タスクくんをカウンセリング


(飽きた)

「少し話をしようか」
そう言って、談話室の扉は閉ざされる。鍵などはかかっていない。
僕は扉を背に、先生は窓を背に、向かい合って座り合う。温かなココアの入ったマグカップが二つ。いかにも先生が好きそうな、可愛らしい柄のマグカップだ。

「予め言っておくと、今日のお話は私の好奇心なんだ。だから、君はいつでもその扉から出て行って構わないよ」
「……先生、僕は次の時間体育なんですが」
「うん、知ってる。大丈夫だよ、担任の先生にはお話ししてあるから」
「そう、ですか。…それで、お話というのは」
「私から言うことは特にないよ。龍炎寺くんのお話を聞かせて欲しいな」

ニコニコとした笑顔を浮かべて、先生はそう告げる。僕の話?何を。そう思い首を傾げたが、先生は笑顔を崩さない。一体、何を考えているというのだろう。
たしか心理カウンセラー、という名を持っていた気がするが…正直僕は何も話すことなどない。
このまま談話室を出て体育の授業に合流するべきだろうか。途中からでも、最低限出席扱いにはなるものだ。
温かな白い湯気を揺らすココアには申し訳ないが、僕は先生と話すことなど何もない。

「すみませんが、僕から話すことは何もありません」
「え、あー、ちょっと待ってよ、まだ何も話してないのに」
「出て行ってもいいと言ったのは貴方です」
「そうだけど、うーん……あ、じゃあこうしよう。私が話を振るから、龍炎寺くんはただ答えるだけでいいよ。それで、君が何か気分を害したら出てってもいい」
「……授業に出るな、と?」
「そう言うつもりはないけど、そう考えるのならそれでも良いよ」

頬杖を付く姿はとても教師とは思えない。学校は何故この人を採用したんだろうか、正直理解に苦しむ。
ぐい、と自分に出されたココアを飲み込めばどろりとさた甘さが体に染み渡る。とても温かくて美味しい、流石は製菓会社の作るインスタントココア。
「じゃあ質問するよ」
その言葉に、現実へ引き戻される。甘いココアを手放して、僕は先生をじっと見つめた。

「まず一つ目。サインください」
「お断りします」
「二つ目、この部屋寒くない?」
「ココアは温かいです」
「三つ目、今日の給食楽しみだね」
「海藻サラダですよ」
「四つ目、君は私の意図と外れた回答を返してくれるね」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「五つ目、一応褒めてない」
「そうですか」

あはは、と苦笑いをして先生はココアを口にする。教師とは思えない太々しい態度だ。
こんな在り来たりの質問に何を求めているのだろう。どうも理解できない…いや、しようとも思わないか。


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