||| シングセイバー様と死体
「お前は、我の為に生きねばならぬ」
そう言って無理やり魂を繋ぎとめた其れは、我の求めた娘ではなかった。揃いの白い髪は見事に黒へと汚れ落ち、空の青を孕んだ瞳は血に濡れた赤へと変貌を遂げる。
ああ、何故だ、あれ程美しかった我の娘はこれ程汚れた色を産んでしまった!?愛し娘の魂は、我が同じ体へと戻した筈。
人間とは何故そう我の与えた命を投げ捨てようとする?その魂我が救ったのだ、我の為に使用するのが道理であろう!お前の魂に我と同じ色はなかったのか?何故こんな、こんな汚れた色を産み落としてしまったのだ!青を孕まぬお前の瞳など不要だ、ああ、穢らわしいその瞳で我を見るな、ああ、ああ!白く美しいお前でなければいけないというのに、何故お前は私の言うことを聞かない!
穢らわしい、お前など不要だ、死んでしまえ、その命我に返す事を望め、今すぐに、でなければお前は、お前の魂は我が全て――。
「わがよのかみさま、どうしてわたしをころしてくださらないのですか」
――お前が、お前で在るから。
そうして娘は、一つ透明な涙を零す。血の赤から落ちた涙は、あの時と同じの青を孕んだ美しい色だ。
ああ、何故お前はこのようになってしまった。穢れないその体を、心を、瞳を、何故このような赤に染めてしまったのだ。我は、お前程美しい娘を見たことがない。
どれ程我が憎んだところで、この娘がどうかなるわけではないのだ。そう、そんなもの理解している筈だと言うのに何故。
愛娘であるのには変わらず、我が愛した事実も何一つ変わらない。そう、悪いのは何もかも我であり、我があの時、ただ共に居たいと欲を出したから、ああ、ああなんと言うこと。
「しゅごりゅうさま」
何も言うな、何も、何も。
「なぜですか」
ああ、お前の声など聞く理由は一つもない。
「たすけてください」
お前が、お前の為、ああ、その声で。
「シングセイバー、さま」
その声で、我の名を呼ぶな。
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