||| 伊吹くんと婚約者
(G設定)
(落ちない)
その銀色の髪が好きで好きで大好きで、何よりも愛おしいと感じています。
林檎のようなその赤色の目がとても綺麗で、白すぎる程綺麗な肌はとても滑らかでほんのりと暖かい。
貴方の何もかもが好きなのです。そう言葉にしても、きっと伝わらないのは自覚済み。
私の腕を引いてくれた、私を導いて笑いかけてくれたあの日の貴方の顔は今でも私の中に強く残っています。
「友達になろうよ」
その短い言葉でも、私はとても救われたのです。
貴方の言葉一つ一つに、私は何度も救われている。これ程までに安心を抱いている。
貴方はとても不思議な方、だから私は常に貴方を肯定する。いつだって、私は貴方の味方でありたい。
たとえあの日のように痛みを伴ったとしても、貴方が貴方でなくなった日であろうと、貴方自身の存在を肯定し貴方に救いの手を差し伸べる。
私たちは酷く不安定で寂しい存在。だからこそ、二人で共に居ようと言ったの。
手を引き、引かれ、笑いあい、ゆっくりと前に進む。
貴方は、とても優しい人なんですもの。
「幸せですね」
そう言って微笑むアイツを柄にもなく綺麗だ思ってしまった。
あの日から何一つ変わらない白い髪、血のようだと散々嫌っていた俺と同じ赤い瞳、血の浮いたような白すぎる肌。
あの日アイツの腕を引いたのは気紛れだった。自分と同じような境遇の、一人で居た人間に声をかければ仲間が出来るのではないかという下衆な考え。
けどその考えを底から変えてしまう程の物を、アイツはオレに与えてくれた。何度も何度も、数え切れない程救い救われ、互いの存在を意識する。
オレはもうアイツ無しでは生きられないのではないかと思う程の、ある種では依存と言っても過言ではない何か。
その微笑みは毒だ、アイツの笑みでオレは何度安心したことだろう。
オレがオレでなくなったあの日、根絶者に飲み込まれた時でもあいつは微笑むことを止めなかった。
その執着は異常だ、それはオレ自身にも言えること。手を離す事はもう出来ない。拒絶する事なんて以ての外。
アイツはオレの事を優しいと言う。何度も何度も、確認とも感じる程に同じ事を繰り返す。
その言葉を肯定出来れはどれだけアイツを安心させてやれるか。それを感じながらも、手を引くのは一切止めない。
アイツが居なくなって困るのはオレだ。自分自身のエゴの為にアイツを利用する最低な人間。自覚はあっても今更どうしようもない。
アイツに対する愛は確かに存在する、けれどオレが本当にアイツを幸せにしてやれるかという現実はまた別の物。
――オレは、アイツと婚約したあの日から愛していると伝えることが出来なくなった。
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