||| 臥炎くんと腐った話
(腐った(物理))
一度死んでしまえば如何ということはない。
痛みなんて今更なにも感じない、悲しいと思うことすらない。否、思ったところでこの身体同様如何にもならないのだ。
うっすらと微笑んだ顔ですら、以前と同様とは限らない。どろどろに皮膚が崩れて腐ってしまった私の身体、詰まる所私は死んでしまったのだから。
後悔なんてある筈がない、あってよい筈もない。したところで意味など一つもないのだから。
貴方も同じように、私が死んだところで何も変化などあるわけがない。以前と同じように歯車を回して世界を動かす。私一人に気を取られるような人間ではないのだから。
その事実に悲しめる程私は余裕がない。悲しんだところで意味などないのだからそうに決まっている。
苦しいかと聞かれれば答える言葉は見つからないのだろう、所詮その程度。
その程度の関係だったのだ。死ねば代わりが用意され安全に回る世界。
まるで病気、パラノイア、腐った世界。
私は貴方を愛していた、けれど愛したところで貴方は何も変わらなかった。それで終わりだ、それ以上を求める理由はない。
ゆっくりとお辞儀をして私の人生に幕を降ろした。貴方によって降ろされた幕はもう二度と上がることがない、私のような死人が表舞台に上がることなど許されない。舞台裏の貴方に会う理由など、会える方法など一つもない。
こうして意識がある状態でも貴方にかける言葉など一つも思い浮かばないのだ。
「ねえ、だから私死んだのよ。後悔なんてしたくないから死んだのよ」
「君はこの世界から居なくなった、君は君である必要がなくなった」
「そうよ、だから今度こそ愛してくれたっていいじゃない。私、私どうすればいいのか分からないんだもの」
死んでしまえば幸せだと思ったの、それでも私は幸せになれなかったわ。どうしたらいいの、なんて自らの首に手をかけても何かが変わる筈がない。
また死んだら貴方は私を見てくれるかしら?そう思いゆるく微笑めば貴方はなに一つ変わらない。ああそうね、貴方はそういう人だったわ。
私の葬式ですら貴方は少しも微笑まなかったんですもの、どうしたら笑ってくれるの?私じゃ貴方の笑った顔は拝めないのかしら。
ああ、それならこんな世界いる意味がないじゃない。生きているだけで息が出来なくなってしまう!
生きて行くのは酷く辛いわ、だから死んでしまったの。こんな暗い墓場で一人佇んでいるの。貴方は人間よ、けれど私は人じゃないもの。
苦しいの、貴方がそうしている理由が分からないから。
知ることを諦めればきっと幸せになれる筈なのに、そうね、私は愚かだから仕方が無いわ。
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