text | ナノ
 ||| ミエルちゃんと幼馴染


「残酷ね、けど見えるのよ」

目の前に座る可愛らしい彼女はそう言った。見える?何が?私の未来か、それとも彼女の何かなのか。
彼女、方中ミエルと私は幼い頃より共に居た俗に言う幼馴染というやつだ。
ミエルちゃんは昔から占いが大の得意で、なんでも未来を見てきた不思議な女の子。
対する私は特になし、一般的で何の特徴もなくて以下略な普通の女の子。
こうして彼女の部屋で、椅子に座り一対一の状況だって対して珍しくはない筈。それなのに今日は一体どうしたというのか、妙に心臓が高鳴り苦しい。
私は今日、何を知るのかが不安で仕方が無い。

「ミエルには全てが見える、ナマエの運命すら」
「うん、ミエルちゃんの占いは百発百中だもんね」
「そうよ、だから見たくないものだって見えるの」
「どういうこと?」
「ナマエ、本当にそれを知りたいの?」

心なしか、ミエルちゃんの声は低くなる。
その真面目な目が、くるりとした綺麗な目が私は好きで仕方が無い。
本当に知りたいのか否か、それを聞かれて返事に詰まるのは人間の心理的なものなのだろう。
ミエルちゃんの占いは完全で完璧、けど彼女は時々意地悪な物言いをする。本当に知りたいかどうか、知る必要はあるのか否か。
彼女以外の人にそんなことを言われたら、別に構わないと言って話を聞くのだろう。けれど彼女の占いはいつだって事実、本当、予知予言。その言葉は、警告にも近い。
それを知って不幸になるのは私だけではない。私の事を守ってくれたミエルちゃんだって、同じように。

「うーん……それを私が知ったら、ミエルちゃんは不幸になるかな」
「いやね、この事実を知った時点でミエルは既に不幸よ」
「じゃあミエルちゃんだけが不幸なのはだめだね、私も不幸にならなきゃ」
「…あんた本当に馬鹿なのね、昔からなんにも変わらないわ」

自嘲気味に笑いながら、ミエルちゃんは透明な林檎を掲げる。
ちっちゃい頃からずっと一緒の綺麗な林檎。透明なその中に何が映るのか、私には何も分からない。
「手を出して」
そう言ってミエルちゃんは林檎を私に突き出した。
嫌だなあ、私林檎の中なんて何も見えないのに。占いの才能なんて一切ない、だから私には人の未来は疎か自分の未来すらなにもわからない。
言われた通りに手を出して、林檎の前へとゆっくり翳す。
中身はやっぱりなんにも見えない。

「――はあ」
「何か見えたの?」
「見えるわよ、とっても嫌な結果が」
「ミエルちゃんがそんなこと言うなんて珍しいね。どんなの?」
「――ナマエの運命の人はミエルよ、けどミエルの運命の人はナマエじゃない。ただそれだけ」

そう言ってミエルちゃんは眉を下げた。
運命の人?何を言っているんだろう、私は女の子でミエルちゃんも女の子なのに、おかしいなあ、これって私がおかしいの?
女の子同士が運命なわけないじゃない、ミエルちゃんは私のだいじなお友達だよ、それ以上に何かあるのかな?
ぱちりと瞬きをして、無言のまま首を傾げる。ミエルちゃんは悲しそうな顔のまま。どうしてそんな顔をするんだろう。
「ミエルはナマエのこと、とっても好きよ」
「わたしもミエルちゃんのこと好きだよ」
――だってお友達じゃない。
その言葉を続ける直前、ミエルちゃんの悲しそうな顔が視界に収まる。
なんでそんな顔するの?なんて悲しすぎる質問を出来るはずがなかった。きっと、答えは既に分かっているんだもの。


back to top
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -