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恋に賞味期限なんてない


一番後ろの窓際。教室の端の席。心の中で呟きながら、大好きな彼の姿を探す。あ、いたいた。
「ねぇねぇ好きだよー」
「えっ、ちょ、ど、どしたの?」
ぐでーっと伸びをしていた悠くんにさらっと告げると、悠くんは慌ててがばっと立ち上がった。そんなに驚かなくてもいいと思うんだけどなぁ。
一瞬で耳まで赤くなった悠くんに一言。
「どうもしてないよ。悠くんが好きなだけ」
ふふふ、と後ろで手を組んで笑うと、悠くんが首を傾げる。
「宮古さんてそんな子だったっけ」
「なんでー?あたしのことなんだと思ってたのー?」
「むぐ、」
頬っぺたを軽くつねると、手を掴まれて少しどきっとする。よく見ると悠くんの手って、大きくて男の子らしいんだなぁ。ゴツゴツしてるってわけじゃないけど、指の長さとか自分と比べると悠くんも男の子だと痛感する。自分が少し小さいせいもあると思うけどね。
「昼間からいちゃいちゃしてんじゃないの!」
べしっ、と上からノートで叩かれる。痛い、と頭を抑えて、声のした方を見ると、案の定かおるちゃん先生だった。
「かおるちゃん先生やきもちですか。……独り身だから」
「宮古さんそれ言っちゃダメなやつ!」
「宮古寿々うるさい。っていうか、その呼び方やめなさいって何度言ったら分かるのよ」
かおるちゃん先生が深いため息を吐く。あーあ、ため息吐くと、幸せがどんどん逃げちゃうんだぞ。ますます幸せ逃がして先生大丈夫なのかな。
「で。別にね、いちゃもん付けに気たわけじゃないのよ」
また、かおるちゃん先生がノートで頭を叩いてくる。現在僅か150cmしかない身長がこれ以上縮んだらどうするんだ。悠くんとの身長差も気にしてるんだから本当にやめてほしい。
ちなみに言うと、悠くんは現在175cm。しかもまだ伸び続けてるなんて羨ましい限りだ。むしろ、縮んでくれないかな。
なんて真面目に身長差を考えてる場合じゃなかったらしい。
「宮古寿々、あんたまた赤点だったでしょ!」
「きゃー、かおるちゃん先生がいじめるー!悠くん助けてー」
悠くんの後ろにぱたぱたと隠れると、先生が睨んできた。また嫉妬かな。
「宮古さんてば、また補習なんですか?」
おそるおそると言った感じで悠くんが先生に聞く。うえー、補習やだなー。
「当たり前でしょ「やだー行きたくないー!」
「もう駄々こねないの。そんなに嫌ならギリギリでも赤点取らないようにしなさいよね」
「悠くんは?赤点?」
助けを求めるように見つめると、悠くんは苦笑いで
「違うからね」
「悠くんから離れたら死んじゃう病なので、補習には参加しませーん!」
ぴしっ、と手を挙げて堂々と発言するも無念。かおるちゃん先生はガン無視で、補習の日程が書かれたプリントを押し付けてきた。
「そんなんなら死んでしまえ」
「先生それ教師的な意味でダメですっ!」
「悠くん、嫉妬っていうんだよ!かおるちゃん先生この間またフラれたって聞いたし。だから寂しいんでしょー!」
「え、またフラれたの」
「うるさい黙れリア充ども」
今度は悠くんにもノートを叩きつけた。
「あんたも赤点ギリギリだったんだからね。補習にするわよ?」
なーんだ、悠くんもギリギリだったんじゃん。少しほっとした。だってそれだったら、
「じゃあ悠くんも補習出よ!」
悠くんも出たっていいじゃん、補習。
「え、宮古さん今なんて」
まじかよ、って顔に書いてあるけど、そんなの知らない。だって、あたし悠くんと離れたら死んじゃうんだから。ずっとずーっと一緒にいたいの。1秒でも長くいたい。
「はーい、丸山悠と宮古寿々は二人仲良く補習でーす。はいはいけってーい」
「先生そんな強引な!」
そんなだからフラれるんですよ!と悠くんが余計なことを言うと、かおるちゃん先生は予想通り悠くんの顔面にノートを叩きつける。うわあ、痛そ。
「せっかく赤点免れたと思ったのに……」
がっくり項垂れる悠くんだけど、あたしは全然嬉しい。ちょっと悠くんには悪いことした気がするけど、いいや。悠くんと一緒にいられる時間が増えたんだもん。
「ま、宮古寿々の方が生物と古文の点数良かったし、教えてもらえば?ていうか、宮古寿々その2つだけ異様に満点に近いし」
「生物と古文は好きなの。悠くん苦手なら教えてあげるよー」
他は好きじゃないから、全然できないけどね。好き嫌いしちゃダメだとかよく言われるけど、人間だもの。好き嫌いくらいあるよねー。
ピースした手をにょきにょきと折り曲げて遊んでると、悠くんは尚更落ち込んだみたい。
「宮古さん生物と古文何点だったわけ?」
「えっとねー、生物が95で古文が98ー」
「えっ、」
あっ今の顔は完全にあたしのこと馬鹿にしてた顔だ。あたしだって全教科できないわけじゃないんだぞ。失礼な。悠くんでも怒るよ。
「ね?宮古さん極端なだけだから。……じゃあ私は二人が真面目に補習に参加することを教頭に伝えてくるので」
補習補習〜と鼻歌まじりにスキップする先生を悠くんと二人で睨む。そんな鼻歌まじりに言わなくてもいいのに。嫌がらせだ。確信犯だ。まあでも。
「ねぇ、悠くん。あたし補習受けるのやだけどね、悠くんと一緒だと思うとすっごい楽しみ」
「お、俺だってそれは嬉しいけど……。でも補習はなぁ……」
やっぱり巻き込んじゃったのは悠くんも嫌だったのかな。今更ながらちょっぴり不安になる。
「……じゃあ今度お出掛けしよーよ。そしたら悠くんだって楽しいでしょ?」
素晴らしい提案だね、あたし。悠くんの顔も一瞬にして明るくなった。
「宮古さん、ありがと」
「えへへ……って、ん、」
急に顔を近づけられてびっくりしたけど、悠くんからしてくれたことに少し嬉しさを感じる。
唇にそっと触れるだけ。それだけのことなのに、何でこんなに幸せな気持ちになれるんだろうね。にっこり笑って見せると、悠くんは耳まで真っ赤になって照れてしまった。




…あとがき…
あまあま苦手なんですが、こんな仲良いカップルは素敵だと思う。


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