にぃにと一緒!

「すぴるべ!」
「しゅく!」

帰ろう帰ろう、とコロコロした姿でころころと声を飛ばすのは小さな小さなお子ちゃま二人だ。
ふわふわの鼈甲飴色の髪の男の子と、黒髪黒目の女の子。
にぃま、と笑った静玖はすいと目の前の少年に手を伸ばす。
彼がその手を取ることを知っているからこそ、手を伸ばした。

「あっ、おれも!!」

そうして反対側から、綱吉が手を伸ばした。
彼────すぴるべでもしゅくでもない、スペルビ・スクアーロは深いため息を吐いて二つの小さな手をとった。
イタリアから日本にやって来て、スクアーロがやっていることと言えば剣道と子育て。うっかり勉強が疎かになっているがそれはそれで仕方がない。
如何せん師匠が師匠だ。音楽と剣の道とを愛するあの男は、ちょっとやそっと勉強が出来なくても気にしない。
そしてその弟は孫が居ようが居まいが関係なしに未だに女装スタイルを貫いている。勉強? なにそれ、美味しいの? とけろりと言ったあの姿が忘れられないのも致し方がないと言うものだ。
また、同じように浅蜊家に居候している男に至っては、フリルとレース、そしてリボンをこよなく愛するイタリアーノでもある。
上背があるのだがフリルとレースたっぷりの女装とも言い難いスタイルの彼を見ていると、傍らにいる幼子の養育に宜しくない気がしてならない。

「きょーのお八つはなぁに?」
「さあなぁ」
「うちのはチーズケーキ!」
「そうかぁ」
「アウラディさん来るかな?」
「アラウディな。………あいつは連絡なしに来るから、どうかわかんねぇぞぉお」
「ひばりさんは!」
「知るかぁ」

左右から聞こえてくる子供特有の高い声に律儀に答えながら、スクアーロはふぅ、とため息を吐いた。
自分は剣の道とやらを習いに来たはずだった。
何故子守りなんてものをしなくてはいけないのだ。
………だがしかし、そんな日常を丸っと受け入れている自身に嫌悪感を抱かないことが一番の不思議でもあった。

「どしたの?」
「どーしたの?」
「………なんでもねぇぞぉお」

小さな手の温もりを手放せないと思っている時点でもう、イタリアにいた頃の寂しい生活には戻れないのだ。
痛くならない程度に手を握りしめて、スクアーロは静かに笑った。




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居候のにぃに、スクアーロとのお話。
たぶんきっと幼稚園帰りです。



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