『ディーノさん:ロマーリオ付きでカッコ良くエスコート』という素敵なネタを頂いたのですが、なんかズレたので没。
でも貧乏性なので載せてみる。
しゅ、と香水を控えめにかける。
それは、派手さを好まない彼女のため。
だけど、アピールをしなさ過ぎも駄目。
だからほんの少し、いつもの量には絶対に届かない程度に抑える。
「ボス、そろそろ時間だ」
「あぁ、わかってる」
スーツでキメると萎縮されるからカジュアルに私服。
いつもと違うモノを1つ。
あの子が少しでもオレを意識してくれると嬉しい。
☆ ☆ ☆ ☆
わぁ、と零れた小さな声に引かれるように視線をそちらに向けた。
ショーウィンドウの中にででん、と腰を据えた大きなテディベア。
欲しいのか、と聞けば即座に首を横に振る静玖に、思わず苦笑した。
「欲がないな」
良くも悪くも。
オレが日本でよく行く店で昼食を食った後、彼女が選択したのはウィンドウショッピングだった。
はぐれないように、と静玖の手を握り締めているけれど、それ以上何もない。
「別に欲がないわけじゃありませんよ」
「そうか?」
「身に余る贅沢が嫌なだけです」
「なんだ、そりゃ」
彼のボンゴレ九代目の寵姫に、余る贅沢なんてあるのか?
そう聞こうと口を開こうとすれば、ついと人差し指で抑えられた。
「ティモは関係ない、ですよね?」
「………ん、」
すっと離れていった人差し指に目を伏せつつ、それに、と小さく言葉が続いた。
なんだ、と問い返せば、静玖は照れたようにぽりぽりと頬をかく。
「ディーノさんみたいなきらきらしい人と並んで歩くという贅沢をしてるので、今は物欲が湧かないというか、ええと、そんな感じ、」
です、とまで言わせる前に繋いだ手を引いて傍へ引き寄せた。
あぁ、なんでこう。
「お前、本ッ当に可愛いなぁ」
「えぇ、なんでですか?!」
街中で抱きしめるわけにもいかない(100%の確率で逃げられる)し、さてどうしよう、と悩んだ結果、腕を組むことに落ち着いた。
さっきより密着したそれが恥ずかしいのか、俯いたために髪が流れ薄く見えた首筋は淡く色付いている。
あーもー!
「イタリアつれて帰りたくなる」
「ディーノさん、」
「大丈夫だ、わかっているから」
今日はプロポーズの日ではなく、デートの日だ。
それはわかってる。
だから後方にロマーリオだっているんだし。
───ああ、でも、
「デートで満足出来なくなったら嫁に来てくれるか?」
「な、」
「善は急げ、だな」
「ちょ、」
ディーノさんっ、と声を上げて慌てる静玖を掴んだまま走り出した。
この後、ディーノさんが指輪を買って跪きながらそれを薬指に嵌めて「予約な」と微笑むまでを考えましたがそれは「デート話」ではなく「プロポーズ話」になっちゃうだろ、と止めました。
必ずリベンジを………!!