きらきらと太陽の光を反射する綺麗な金色の髪をさっとかきあげる。
優しさを宿した視線の先に居るのは幼い少年と少女が一人ずつ。
公園の芝生でコロコロと楽しそうに転がる二人をじぃ、と眺め、その麗しい容貌をふわりと微笑む事でさらに美しくさせた。
公園のベンチに似つかわしくないストライプのスーツを身に纏った男の名をジョット。日本に帰化してからは、「沢田家康」と名乗っていた。
年の頃は20を半ばほど過ぎた辺り、頑張って見積もっても30を僅かに越えたばかりにしか見えない。
だがしかし、
「じいさま!」
「じいじさま!」
そう、彼は『祖父』である。
芝生で転がっていた少年と少女はそう言いながらジョットへと近付いた。
少年も少女も、ずいぶんと長い間転がっていたのか、その身にたくさんの芝生の葉を付けている。
その少しばかりやんちゃが過ぎた姿を見て、ふ、と静かな苦笑を返した途端、幼子2人からすっと手を差し出された。
「じいさまも!」
「オレも………?」
「うん、じいじさまもいっしょ!」
紅葉のような小さい手が、拙く遊びへと誘(いざな)う。
幼子達には大きすぎるその手を差し出そうとした瞬間、ジョットの首根っこをぐん、と掴む手が。
「何をするんだ、G」
「何をしようとしてるんだ、ジョット」
「綱吉と子雪がせっかく誘ってくれたんだ。是非参加しなければ2人に失礼だろう?」
「アホか。ほら子雪、来い」
幼子2人を呼んだのは、その手に缶ジュースを持った赤髪の男───Gだった。
子雪、と呼ばれた少女はぱたぱたと軽い足音を立ててGへと近付く。
Gは少女の黒髪に絡んだ青臭い匂いを漂わせる葉をはたき、それから小さな手に缶ジュースを預ける。
ふにゃん、と力の抜けた笑みを浮かべた少女の頭を改めて撫でたGは、同じように綱吉の草を払いながらもどこか不満そうな顔をしていたジョットを一目見、ふぅ、とため息を吐いた。
「Gさん、じいじさま、ごきげんナナメ?」
「気にすんな。いい年こいて拗ねてるだけだ。ほら、綱吉」
「ありがとー」
少女同様ふにゃんと笑った綱吉の手に缶ジュースを預け、そして綱吉を手招く。
少女の隣に収まった綱吉は、彼女の名前を呼びながらすり寄った。
「じいさま、怒ってる?」
「………いや、そうではないよ、綱吉」
可愛い可愛い孫に聞かれ、怒っている、と言うわけにはいかない。
ジョットは甘く笑ってから綱吉の身体を抱き上げた。
「奈々が待ってる。帰ろうか」
「うん!」
「子雪、どうする?」
「かたぐるま………!」
小さいながらもはっきりと自身の希望を口にした幼子を、その希望通り肩車したGを見てからジョットは歩き出す。
穏やかな日は、いつまでも続くのだった。