雪、空と共にイタリアに


「私と一緒に行こう。私と共に、生きておくれ」
「ティモ?」
「おいで、私の傍に」

小さな小さな雪のお姫様に手を伸ばした。
そっと握り返された手に、満ち足りた心地になったときの喜びと言ったら。
喜びと、言ったら───。




☆ ☆ ☆ ☆




「九代目、その幼子はっ」
「誘拐はしていないよ。ちゃんとご両親に了解は取った」
「ですが」
「いいんだ。………おいで、私の可愛い雪の姫」

きょと、と目を丸くした静玖に両手を差し出せば、おずおずと彼女もまた、両手を挙げた。
脇に手を差し入れて小さな身体を抱きかかえて腕に座らせる。
老体に鞭打ってでも触れていたいのは、彼女が私の雪だからだ。
他の大空だって一生に会えるかわからない雪だからだ。

「ティモ、」
「どうしたんだい」
「ティモ」

きゅう、と小さな身体でしっかりと私の首に抱きついてきた静玖に目を伏せ、その背に腕を回す。
あぁ、そうだ。矢張り彼女なのだ。彼女だけなのだ。

「イタリアへようこそ、私の可愛い雪の姫。君に出会えたこの世界を、共に祝福しよう」






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