Oath of snow番外編三種

1.夜中のカップラーメン


「お姫ー! お姫、お姫、起きろ! 腹減った!!!」
「………………いまなんじだとおもっているんですか、ベルおうじ」
「は??? 王子が腹減ったっつてんだから、何か作れよ」

作るのは別に構わないんだけど、時間がなぁ。真夜中です、おはようございます。
ふわふわと外からの風で揺れるカーテンを見つけて、せめて玄関から入ってきてくれ、と思ってしまった。
…………そう言えば、スペルビも窓から侵入したな。好きなのかな、侵入。
叩き起こされて、ふぁ、と欠伸を一つ。
もそもそと身体を起こして、ベル王子の足元を見た。
よし、靴は脱いでる! OK、OK。

「じゃあ、キッチン行きますか」
「しししっ」
「雷が起きちゃいそうだよなぁ………」

みんななんやかんや気配には敏いだろう。
人が動けばきっと気付いちゃうだろうけど、うーん、どうかな、見逃してくれるかな。

「なんでも良いですか?」
「ん」
「何かあったかなぁ、」

とんとんとん、と軽い音を立てながら階段を降りていって、キッチンに何かあるか思い出す。
けれど、寝起きの頭がなかなか回らない。
あ、お狐さま、お休み中だ。髪の毛どうしよ。適当に括るか。

「あ、カップラーメン」
「日本のカップラーメンうまいよな! 王子、嫌いじゃないぜ」
「じゃあ、これにしますか。好きなの選んでください」
「塩にするぜ」

電気はキッチンの方だけ付け、ミニテーブルに置いてあったシュシュで適当に髪を結って、ポットのお湯をボタンを押して沸かし直す。さらっと手を洗ってから、冷蔵庫確認。
おー、なんかあるね、水に浸してあったもやし、千切りになって残ってたキャベツ、使いかけの人参………嵐ちゃん手作りのチャーシュー! しかも切れてる!!! ちょっと贅沢にしてあげよ。
フライパンに温めてから油を垂らして、水をきったもやし、キャベツ、適当にスライサーで細くスライスした人参を入れる。
味なんか塩コショウで良いんだよ。いや、なくても問題なし。
しっかりと火を通して、手を止める。ちょうどポットのお湯が沸いたので、それをカップラーメンに注入。蓋をして後入れスープを重み代わりに乗せる。
ちらっと冷凍庫を覗けば、おにぎりがある。うん、チンしよ。
てーいと軽い気持ちでレンジにおにぎりを投入。三分以内に温まるでしょ。知らないが。温まらなかったらラーメンの中に入れちゃえばいいんだよ。うんうん。

「………………多くね?」
「え? 年頃の男の人って食べるのでは?」
「食事量って各国違うんだぜ? 知らねーの? お姫バカなの?」
「あぁ、食文化の違い………」

朝は軽め、昼も軽め、夜は重めにがっつり、とか、食事量すら食文化として伝わっている国もあるもんね。すっかり忘れてた。ってか、そこまで気にしてなかった。
文句があるなら自分で作れば良いんですよ、ベル王子!!
………………いや、ベル王子には言えないや。ナイフ飛んできたら死んじゃう。

「はい、三分立ちましたー。蓋剥がして、スープ溶かして、野菜乗せて、チャーシューも乗っけて、おまけにおにぎりです。はい。どうぞ」
「どうぞではないが」
「!」
「げ、起きてきた」

ぱちん、とリビング全体の電気が点けられる。
居たのは雷で、腕を組んでムスリとしていた。
あ、怒られる。

「雪の嬢、後は俺がやろう。休まれたほうがいい」
「あ、でも、」
「大丈夫だ。邪険にはしない」
「うん」

最初は気にしてたみたいなのに、もうすでに音を立てずにラーメンを食べているベル王子は、やっぱり精神図太いのでは。

「じゃあ、また寝ます。ベル王子、ちゃんと窓閉めて帰ってくださいね」
「雪の嬢………」
「お姫、スク隊長に怒られた方が良いよ」

どういうことなの?!
夜中に私を叩き起こしたのベル王子じゃん! そう思いながら自分の部屋へ帰るのだった。

後日、スペルビだけじゃなくて綱吉からも怒られたのは解せなかった。


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