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夕食を頂いて、私は千隼くんに駅まで送って貰うことになり一緒に歩いている。
『ごめんね、駅まで送ってもらっちゃって。遠回りにならない?』
「大丈夫。むしろもう少し一緒にいたいから。遠回りしたいくらいなんですケド。」
『…ダメ。千隼くんが帰るの遅くなっちゃう。』
「いいのに。」
『その代わり…手、繋いでもいい、かな?』
勇気を振り絞って言ってみたが、思ったよりも恥ずかしくて、多分きっと私の顔赤いはず。千隼くんは少し笑い「喜んで」と言い私の手を握ってくれた。
千隼くんに手を引かれながらゆっくりと駅までの道を歩き出した。
途中でアクセサリーの露店屋さんがあり私がみたいと言うと寄ってくれた。
『わっ、かわいい!』
「好きだよな、女ってこういうの。」
『うん。千隼くんは苦手?』
「好きではない、かな。」
『じゃあ、おそろいとか無理かぁ…』
何気なくそう呟くと千隼くんは「物による」と答えた。
『ん〜…このウサギのイヤホンジャックなんでどうでしょう!』
私がもったのは黒と白のぷっくりふわっとしたウサギがスマホに抱きついているようなイヤホンジャックだった。
『ちょっと千隼くんには可愛いすぎかな?』
「いや、大丈夫。これにしよう。」
千隼くんはお店のお兄さんに「コレ下さい。」と言って2つとも買ってくれた。私が半分出すと言っても聞き入れてはくれなくて、お言葉に甘えて貰うことにした。
私はさっそくスマホをだし白いウサギを着けて千隼くんに見せると千隼くんも黒いウサギを着けて見せてくれた。
『千隼くん!ありがとう!』
「どういたしまして。お前にはいろいろ貰ってばかりだったから、これだけじゃ、少ないくらいだけどな。」
『そんなことない。すごく、すごく嬉しい!大事にするね。』
初めて好きな人に貰ったものだから、ずっと大事にする。
幸せな時間は短くて、あっという間に駅についてしまった。
『着いちゃった、ね。なんだか、嬉しくて、今は不安』
「え?」
『今日のことは夢でした、なんて落ちが待ってるんじゃないかって不安。』
明日は千隼くんがまた遠くなってるんじゃないか、また久実のことを見つめている千隼くんを見ることになるんじゃないか、そんな不安がよぎり、顔をふせた。
『……な、なーんて…』
微妙な空気にしてしまったと思いおどけて笑い顔をあげるとすぐ近くに千隼くんの顔があった。
ピピピッ ピピッ
「ハァイ💗路チュー禁止ー寸止めよ💗デート終了。高校生はかえりましょう。」
アラームと一緒に千鶴さん、小鳩さん、つぼみさんが現れた。