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〜千隼〜
マラソン大会で1位をとったらクマ女と1日デートをすると宣言し、1位をとった。
週末駅で待ち合わせをし、クマ女と水族館へやってきた。
「千隼くん!アシカのパフォーマンスタイムがあるって!」
「見て見て!ペンギン!」
クマ女がはしゃいでいろんなとこをみている。そう言えば前もあったな。同じようなこと。
『わぁー綺麗!すごい!ねぇ!千隼くん!』
『おっきいサメ!すごい!』
『水族館初めてで…』あいつも嬉しそうに見てたな。
「あの水槽。ドーナツ型にすることで水の量を減らす役割もしてるんだ。少しずつひとつひとつの水槽を軽くすることでビルの屋上でもこれだけの水族館がつくることができたって」
「へぇ、そうなんだ。すごいね、千隼君。よく知ってるね。」
「調べたんだ。…好きだと思うから……!…中いくか。」
「う、うん!」
今誰のことをおもった?
今一緒にいるのは想い続けていたクマ女なのに。
「ヤバイ、やっぱこえぇくらい似てる…」
「千隼君ひどい…どこら辺が?」
「丸くて白くてふわーっとして、ぼへーっとしてるとこ」
クマ女はクラゲの仲間か?笑える。
「じゃぁ、真希ちゃんを海の生物で例えると?」
「真希?んー…クリオネ?」
「なんで?」
「クリオネって氷の妖精って言われてるだろ?ぴったりじゃん。あいつと。あと消えそうだけどちゃんたソコにいるとことか。」
いつも笑って見えるところにいた。
最近は全く会わなくなったけど。
「千隼くん、真希ちゃんのことどう、思ってるの?」
「え?」
「本当は水族館、真希ちゃんを思って調べたんじゃないの?千隼くん、真希ちゃんの話してるとき幸せそうなんだよ。気づいてた?」
「……」
「千隼くん、」
「次、行こう。もう1箇所だけ連れていきたいところがあるんだ。」
クマ女はうん、と困った顔で頷いた。
「うわぁ!クマがこんなに!ひとつひとつ顔がちがう!かわいい!」
『かわいい!サメのぬいぐるみ!』アイツもおんなじぐらい喜んでたな。
本当はとっくにわかってる。
「本当に最初は引かれていたんだ。クマ女お前に。だけどいつのまにかアイツが、真希が頭ん中にいて、アイツと一緒にいると穏やかで居心地が良かった。だけど、ずっと俺はクマ女が好きと思い続けていたからわからなくなっていたみたいだ。だからこそ、今日、ちゃんとけじめつけたかった。終わらせたかったんだ。俺、お前が好きだった。」
「うん、ありがとう。千隼君。」
「ごめん。振り回して。」
「千隼君。謝る相手私じゃないよ。」
「そうだな。」
「早く行ってあげて。真希ちゃんのところ」
「あぁ、行ってくる。ありがとうクマ女。」
どういたしまして、と手をふって送り出してくれたクマ女をおいて、今度はアイツのもとへ走る。
都合が良いかもしれない。いつもアイツをおいて、クマ女のとこに行っていたのだから。
それでも、今は真希しか考えられなかった。