のこったのこった




「まきちゃん大丈夫!?」
『あ、うん。大丈夫だよ。あたっていないし!』

駆け寄ってきたタケルくんは心配するようにわたしの顔を覗き込んだ。わたしは大丈夫、安心してというように、明るく振る舞った。

「なにするんだ!危ないじゃないか!」
「そりゃー危ないさ。狙ってやったんだから!」
「どうしてそんなことするの!」

パタモンが珍しく声を荒げている。エレキモンは近くにいた赤ちゃんデジモンを抱き上げ「うちのベイビーたちを可愛がってくれたからさ」と言った。

その答えにタケルくんもパタモンも…わたしたちもきょとんとした。


「可愛がったけど…それのどこがわるいの?」
「ねぇ?」
『赤ちゃんは可愛がるものだよね?』
「チッチッチ…これだから困る。可愛がるって言葉にはなぁ、普通に可愛がるって意味のほかにいじめるって意味もあるんだよ。」
「全然意味ちがうよね?」
「ボク意味わからなーい。変なの〜」

テリアモンとロップモンとよく分からないねと顔を見合わせる。タケルくんとパタモンも抗議した。


「ぼくたちいじめてなんかないよ?世話してただけ!」
「そうだ、言っとくがな。誰もおめぇーらに世話なんか頼んでねぇーぜ。」
「そんなこと言って!君こそベイビーたちの何なんだよ!」
「何って保護者というか…世帯主というか…ごにょごにょ………そんなことどうだっていいじゃねぇか!このガキ!」
「お前だってガキじゃないか!」
「うっ!うっ〜あったまきた!!」

パタモンと言い合いになったエレキモンはとうとう怒ってしまった。ふたりとも勢いよく飛びかかる。ふたりのケンカで周りに重ねてあるブロックみたいなものが崩れ落ちる。


『危ない!テリアモンにロップモン!』
「まかせて!プチツイスター!」

テリアモンとロップモンが攻撃で下にいるデジモンに当たらないようブロックを遠くに飛ばしてくれる。だけどパタモンたちのケンカは止まらなくて、ブロックの崩れも止まらない。


『どうしよう…やめて…パタモン…エレキモン!』
「まきちゃん…、やめてよ…やめてーーーーー!!!!!」

タケルくんの大声にふたりも目をぱちくりして止まった。

「やめてよキミたち。ケンカは良くないよ。ベイビーたちもまきちゃんも怖がっているじゃないか。」


周りをみれば赤ちゃんデジモンはブルブル震えてわたしに集まっていた。わたしはその場に座り震えているデジモンを抱き上げて『ごめんね、怖がらせたよね…』と伝えるとスリスリとすり寄ってきてくれた。他のデジモンも近くに寄ってくる。

「あーあ。ボクたちの真希なのになぁ。」
「赤ちゃんにヤキモチ焼いてどうするのさ。」
「そーなんだけどさぁ。」
『テリアモン、ロップモン。ありがとう。守ってくれて。お疲れ様!』
「当たり前〜」

一仕事してくれたテリアモンとロップモンが戻ってきて感謝を込めて頭を撫でてあげるとふたりとも嬉しそうにした。

『よかった…被害なくて。』
「そうだね!でも…あれはなに?」

ロップモンの言葉に指した方をみると相撲?みたいなのが始まる様子だった。みんなでタケルくんたちのところへいき理由を聞いてみるとパタモンとエレキモンが正々堂々勝負したいということで綱引きをらするらしい。見た目完全に相撲なのに?なんて突っ込まないけど…。

タケルくんの「はっきょーいのこった!」の掛け声でパタモンとエレキモンは紐を引っ張りあう。エレキモンが優勢かと思ったらパタモンが足に力をいれエレキモンを文字通り投げ飛ばした。エレキモンはブロックに当たりクッションタイプなのか穴をあけて中に入ってしまった。その衝撃で穴から沢山の羽根が飛び舞う。

「わぁ…飛んだぁ。」
『綺麗…桜みたい…』

結果はパタモンの勝ち。エレキモンも潔く負けを認め握手を交わしていた。そしてだいぶ時間がたったが、「始まりの町へようこそ」と歓迎してくれた。

「本当に悪かったなぁ。ほらここんとこ変なことばっかり続いてるだろ。あげくの果て島も割れちまうし。疑い深くなっていたんだ。大人ぶっていたとこでオレもまだまだガキだったってことだな!」
「子どものケンカならいいよ。すぐ仲直りできるから。でも…大人のケンカは…」
『タケルくん?』

そう言って暗くなったタケルくんの表情に心配になった。

「さいしょは小粒でぴりりとからい…?」
「三色スミレはぴりりとからい?キミ三色スミレ食べたことあるの!?」
「…あれ、違ったかな?ま、いいか!しばらくこの町でゆっーくりしていくといい!ま、ベイビーたちのそばではゆっくりも出来ないがな。」

パタモンとエレキモンの会話に笑ったタケルくんをみて少し安心した。

『ところでエレキモンはあの山に帰る方法をしらない?』
「あの山って?」

タケルくんはムゲンマウンテンを見つめた。

「ムゲンマウンテン!?」
「そう!」
『わたしたちムゲンマウンテンに行きたいの。』
「あの山に登る気か?それだけはやめたほうがいい。あそこにはデビモンが!」
「知ってる。そのデビモンにお兄ちゃんたちをどこにやったかきかないと。」
「聞いて素直に教えてくれるような奴じゃないぜ!なんたって凶悪なデジモンだからな。どうしても聞きたいっていうなら倒すしかないな。」
「戦うのだけは嫌だ!」
「嫌っていっても…」
「何か方法があるはずだよ。戦わなくてもいい方法が。」
『そうだね。傷付かない方法さがしたい悲しくならない方法を。』
「そんなのがあったら…「さっきの気持ちを思い出して。みんなで一緒に笑ったよね?何かが起きる気がするんだ。僕たちのこころがひとつになった時」
『何かがおきる?』

タケルくんは遠くを見つめていた。タケルくんには何か予感を感じとっているのかな?

話をきいたエレキモンは何かを思いついたようで反対方向に駆け出した。

『エレキモン?どこいくの?』
「ちょっくらギアサバンヌまで!ピョコモンたちの村があったろ?アイツらにも今の話をしてみんなのココロがひとつになった時バラバラになった島がもどるかもってな!」
「島がもと通りに?」
「予感だけど…オレはそう信じたい!」
「「うん」」
『わたしも信じたい。』
「ボクたちもー!」
「エレキモン。よろしくね。」
「あぁ!じゃあな!」


走り出したエレキモンの姿を見えなくなるまで見送った。その時嫌な感じがし、体を震わせた。

「どうしたの?真希」
『ロップモン。なんか…嫌な感じがして…なんでもない。きっと気のせいだよ。』
「そう?なにかあったらいうんだよ!」
『ありがとう、テリアモン。』


その時はまだしらなかった。わたしたちに…いや、タケルくんたちに悲しみが待っているなんて。



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