ぼくも帽子役する




今日もわたしたちはジャングルを歩いていた。
ロップモンを腕に抱き、テリアモンを頭に乗せている。


空からゴォーと音がしてくる。
わたしたちが上を見上げると、黒い丸いフリスビーみたいなものが空を飛んでいった。
上を見上げるとテリアモンが落ちそうだからみれなかったけど…

「なんの音だ?」
「歯車みたいだったな。」
「空飛ぶ円盤じゃないの?」
「歯車型の隕石だったりして」
「何にしても、いい感じのするものじゃないな」

上を見ることに集中してしまったタケルくんが足を蔓にひっかけて転んでしまった。すかさず太一さんがタケルくんを抱きあげる。

「大丈夫か?タケル」
「いった…けど、大丈夫。我慢する」
「我慢しなくて良いのよ、痛かったら痛いって言っても良いんだから」
「うん…ほんとは、ちょっとだけ痛い」
「大丈夫ー?タケルー?」
「あんさんに言われたないなぁ」

そのやりとりにわたしたちはわらっていた。

「さぁ、行きましょうか!」
「そうだ。泣き事言っても始まらないからな」

「真希ー」
『なーに?テリアモン』
「真希も我慢しちゃだめだよ?ちゃんと言ってね。」
『うん、わかってるよ』

テリアモンとロップモンはわたしを心配そうに見つめてくる。
ほんとに無理になったら無理っていうから大丈夫なのに…しんぱいしょうだなぁ…


「そうは言っても、どっちに行ったら良いかなんて誰にもわからないし」
「それは確かにそうだけど…」
「あたしは空がいてくれれば、それであーんしん」
「そんなぁ、100パーセント安心されちゃっても困るんだけどなぁ。責任取れないよ?」
「100パー…?」
「い、いい、気にしなくて!」
「せきにんとれ?」
「いーってば!気にしないで!」
「あたし、空の言ってる言葉いーっぱいしりたい!もっと教えて、ねぇー」
「そんなの知らなくていいよー」
「なにじゃれてるんだよ!」
「余裕だな」


空さんはいつの間にか後ろにいて、みんなから少し離れた場所にいた。

「好きでじゃれてるんじゃないわよ!」
「ピヨモンは人懐っこいデジモンなんや」
「なるほど、デジモンによって性格がそれぞれ違うんですね」



『テリアモンはのんびりなあまえん坊。でもなにかと周りを見てるよね。』
「そーう?」
『ロップモンは色々教えてくれるしっかりさん。でもなにかとわたしを心配してる。』
「テリアモンよりはしっかりしてる自信あるよ!真希は色々と心配にさせるの!」
「確かに、真希君は年のわりにしっかりしているから、つらいときにつらいと言えなそうだもんな。テリアモンとロップモンがいれば大丈夫そうだね。」


丈さんはテリアモンとロップモンに「頼むよ。」と頭を撫でた。甘えん坊に見えてちゃんと見てるテリアモン、心配性のしっかりなロップモン。ふたりがわたしを守ってくれてる。
その事にとても嬉しく思っていた。



「テリアモンとロップモンがパートナーでよかったですね。真希さん」
「なんでぇ?」

光子朗くんの言葉にゴマモンが聞く。

「だって、さっき丈さんもいってましたが真希さんは少々遠慮がちな部分がありますから。テリアモンとロップモンがいることにより言いたいときに言える安心感が出てきたんじゃないでしょうか?」
「さすが光子朗〜。真希もっとボクたちを頼って大丈夫だよー受け止めてあげる〜!」
「光子朗さん、真希ちゃんのこと知ってますアピールしなくていいよ!これから知っていくもん!」
「おや?アピールではなく、知ってるんです。タケルくんよりは付き合い長いですから。」

わたしを挟んで光子朗くんとタケルくんのなぞの戦いが始まった。わたしは困って丈さんをみるが困ったように笑われてしまった。

「真希もなかなか大変だね。」
『?』

ロップモンが上を向きながらそう言ったがよくわからなかった。

「あっ!森から抜けるぞ」

森から抜けるとそこは一面砂漠だった。

「これって、テレビで見たアフリカのサバンナって場所に似てる…」
「え?じゃあ、ライオンとか、キリンとか、出て来ちゃうのか?」
「さぁ、そんな普通のやつだったらまだマシだけどな」
「ここにはそんな動物いないよ」
「その通り、ここにはデジモンしかいてまへん」
「デジモンしかいない、か」
「光子郎の見たサバンナって電柱とか立ってたか?」
「いいえ、立ってませんでしたね」



砂漠に不釣り合いな電柱にヤマトさんが眉をひそめて光子郎さんに聞いた。どうみてもこの光景は不思議なものだった。


「きっと、人間が近くにいるんだ!きっとそうに違いない!」
「えー!?でも海岸の公衆電話や湖の電車みたいなことだってあるじゃん!」
「いや違う、絶対絶対人間がいるんだって!」

「ここは一体どこでしょう…じゃーん!」とミミさんはなにかを持って近づいてきた。

手元にはコンパスを持っていてそれをみんなで覗き込むが……針はぐるぐると回り方角は不明。


「やーん!なにこれー!」
『わー…くるくる回りまくってますね…』
「砂みたいに見えるけど、これよく見たら鉄の粉だ。磁石にくっつきますよ!」
「やっぱりあたしたち、とんでもないところに来ちゃったのかしら」
「それより暑いですね。はやく水を確保したほうがいいんじゃないですか?」
「んー…たしかにな」
「あーーーー!ここは一体どこなのーーーーう!?」

ミミさんの声が広い大地に響き渡った。


「あー暑い!」
「やっぱり森の中にいた方が良かったんだよ…」
「このままじゃ、全員干上がっちまうな」
「うう…」
「暑いのか?ゴマモン」
「氷が欲しい、せめて水」
「帽子貸してあげようか?パルモン」
「ありがとう…」
「うん、似合うじゃない」
『テリアモン、頭の上にいて大丈夫?』

わたしの頭にテリアモンが乗っていることによって重いけど日射しが遮断され、幾分か楽だった。

「もーすこしならいけそー。」
「テリアモン、後で代わろう。ぼくも帽子役する。」
『え?やらなくていいよ!テリアモン、ロップモンが干からびちゃう!』
「ボクたちはずっと真希に運んでもらってるからね。恩返しだよー」
『なら、ふたりとも歩いて。帽子役なんてやるよりそっちのほうがいい。』

そう伝えるとふたりとも降りて歩き出した。

「空〜そぉら!頑張って歩こう!」
「あなた、元気ね」
「そら、そぉら!」
「あーん、もう!いい加減にしてよ!あたしはね、今喉が渇いてて疲れてるし、歩いてて疲れてるし、無邪気にじゃれつかないの!余計に疲れるわ!」
「空疲れてるんだ。ごめん、ピヨモン大人しくする」
「んーわかったわかった、一緒に歩こう」
「あは、あたし嬉しい!空、だぁいすき」

一瞬、離れた場所にいた空さんとピヨモンだったけれど、またぴったりとくっついた。

「しかし、歩いても歩いても何も見えてこないな。本当に森に戻ったほうが良いかもしれないな」

ヤマトさんの意見に丈さんは「うんうん」と誇らしげに頷いた。

「ちょっと待ってよ、っと」

太一さんは持っていた単眼鏡をのぞきこむ。

「んー?ん?ん?村だ!」
「ほらほらほら、村だって!やっぱり人間がいるんだよ!」
「何にせよ、行ってみる価値はありそうですね」
「喉乾いたね、パルモン…」
「お腹すいたよー」
「うん、お腹空いたー」
「よーし!あの村へ行こう!」
「「おー!!」」



太一さんのみた村へわたしたちはまた歩き出した。

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