ぬいぐるみです…




「まさかヴァンデモンが9人目を見つけてるってことはないわよね?」
「計算ではヴァンデモンが光が丘に出現してから僕たちがここに現れるまで1分と経ってないはずです。時間の流れが違いますから。」
「問題はどうやって光が丘まで行くか、だ。こっからだと結構距離あるぞ。」
「でも…本当に今日はあのキャンプの日なのか?何ヶ月も向こうの世界にいたのに…」
「そうよね…時間の流れかたが違うって言われてもピンとこなくて…」
「キャンプ場の方見てくる!まだそんなに時間は経ってないはずなんだ!」


太一さんは走り出し階段を降りて行く。するとみんなもそれに続き階段へ向かっていた。


「まきはいかないの?」


不思議に思ったグミモンがわたしに聞いて来た。


『…行くよ。』と答えみんなの後をついて行く。落ちたコロモンをキャッチした太一がわたしたちに気づいた。

「みんなでくることないだろ?」
「そんなこと言ったって…」
「僕は班長として」
「やっぱり気になりますから、僕らがいない間にどうなっているか。」
「コイツら誰かに見られたらどうするんだよ〜」

「八神〜!!」
「先生!」


太一さんの名前を叫び階段を駆け上がるように走ってくる藤山先生が見えた。太一さんが先生に駆け寄ると「馬鹿もーん!」と怒られた。それに驚いた太一さんはその場で尻餅をついた。

「後片付けもせんでこんな所でなにブラブラしている!」
「そ、それは…」
「後片付けってンぐっ」

どもった太一さんを尻目にコロモンが声をだして聞いた。太一さんは慌ててコロモンの口を塞いぐ。幸い藤山先生は気づかなかったようでそのまま話し始めた。

「この雪でキャンプは中止と決まっただろう?他のみんなは帰り支度始めてるぞ?」
「そーでした!あはははっ…」
「なんだ?その薄汚いもんは…おもちゃか?」

藤山先生がコロモンや他のデジモンをみて呆れたように聞いてきた。それを聞いたモチモンが「ワテらのどこが薄汚いんや」と怒ったように呟いたことによりみんながデジモンの口を押さえた。

「まぁ、汚れてるし薄汚い…も間違いじゃないね」
『グミモン、チョコモン…わたしがいいって言うまで黙って人形のフリしててくれる?』
「うん。わかった。」

みんなが口を押さえてるなか、グミモンはわたしに聞こえるぐらいの声で呟いたのでふたりにしばらく静かにと伝えるとふたりとも了承してくれたので口を押さえることはしなかった。

そんななか太一さんはしどろもどろに藤山先生に説明し始めた。

「こ、これは…その…ぬいぐるみなんです。」
「見ればわかるって。」
「捨ててあったのをみつけたのよね!」
「そうそう!山の奥深く人も通わぬ辺境の地に捨ててあったものを観覧深紅の末にようやく手に入れたのです。」


丈さん…その説明はどうなんだろうか…ツッコミどころ満載すぎる。
案の定先生から突っ込まれることに。


「人の通わぬ辺境の地にあったものをどうやってみつけたんだ?」
「それくらい大変なとこにあったってこと!そうだよな?みんな!」
「「そう!」」
「ほら!妹のヒカリが急に来れなくなったでしょ?キャンプ土産にって思って。アイツこういうの好きだから。」
「あぁ風邪ひいてるんだったな。」
「もう良くなりました。俺のオムレツ食わしてやったから。」
「お前が!?」
「キャンプ来る前に!そういうことですよ!」
「妹のお土産か…それじゃ、帰り支度が出来たら全員駐車場に集合だ。」
「「『はい!』」」


「グズグズするな!」と藤山先生は来た道を走って戻って行った。
何とか誤魔化せたようだったが、よくあれで納得したなぁ藤山先生…

コロモンが「どうやって光が丘までいくの?」と聞くと太一さんはいい考えがあると言った。

わたしたちは藤山先生の言うとおり準備を済ませ駐車場に向かった。その間太一さんからデジモンたちに注意事項が言い渡された。
わたしたち以外の人の前では絶対動かない、喋らないと言うこと。


『ごめんね。グミモン、チョコモン。しばらくの辛抱だからね?』
「わかってるよ。まき」
「だいじょーぶ。」


2人は何となく大丈夫な感じするけど心配なのは、コロモンだな…。不安げにコロモンを見ると案の定、沢山いる他の子供をみたコロモンは大声で太一さんを呼んだ。

沢山の子供をみたデジモンたちは驚いているようだ。空さんが「世界にはこの何百倍、何万倍の子供がいるのよ。」と説明すればピヨモンは沢山の空さんを想像しているようでそれに気づいた空さんはちょっと怒ったように叫んだ。

「あたしはひとり!」
「街に行けば大人も子供も、もっともっと沢山いるんだよ?」
「へぇー!」


ミミさんは知っている友達を見つけたのかパルモンを押しのけ友達のところに駆け出した。感動の再会?をしているみたいだが、友達はわけわからずといった感じで困っていた。


「こっちじゃ時間は経ってないって、あれほど言ったのに…」
「気持ちは分かりますよ。でも早く光が丘にいかないと!」
「っよし!先生!藤山先生!」


太一さんは藤山先生のもとに走って行くと途中下車の話をし始めた。


「途中下車していいかな?」
「途中下車?ダメダメ!先生はみんなを連れて帰る義務があるんだ」
「そんなこと言わないで頼むよ!光が丘団地の近くでいいから!」
「光が丘?何でそんなところに?」
「そ、それは…昔住んでいたんだ!ちょっと懐かしくなって。」


また太一さんがしどろもどろな説明になっている事に気づくとヤマトさんが「俺たちも行こう。」とみんなで藤山先生のもとに駆け寄った。

そこで運転手さんがナイスなタイミングで「光が丘なら通るよ。」と説明してくれた。それを聞いたわたしたちは顔を見合わせて喜んだ。

太一さんは運転手さんにそこで降ろして欲しいと言うとすかさず藤山先生が「まだ許可したわけじゃない!」と食い下がる。
その終わりの見えない会話を見ていたヤマトさんは小さくため息を漏らすと一歩前に出た。

「先生お願いします!どうしても見ておきたいんです!両親が離婚する前家族仲良く暮らしていた場所を!」
「お兄ちゃん!」
「タケル!」


タケルくんは涙声でヤマトさんに抱きつき受け止め抱き締めるヤマトさん。丈さんはそれを見て藤山先生にお願いした。

「先生お願いします!光が丘で降ろして下さい!僕が責任持って送り届けますから!」
「…まっ、6年の城戸が付いているから大丈夫か…ちゃんと親には連絡しておくんだぞ?」
「はい!ありがとうございます!」


渋々許可してくれた藤山先生はわかったわかったといって運転手さんと去っていった。

「おい!いつまでやってんだよ!」

太一さんはヤマトさんとタケルくんをみてそう言えば2人はしてやったりと笑った。丈さんはわけがわからず「どう言うこと?」と聞いた。

「あーでも言わなきゃ許可してくれそうもなかったからな。」
「えへへっ」
「じゃあお芝居だったのか?僕はてっきり本当だと思って先生に必死で訴えたのに!」
「まぁまぁ上手くいったんだからいいだろ?」
『あのまま太一さんに任せてたら光が丘には降ろしてもらえなそうでしたし…ナイス機転ですよね。』
「俺だって頑張ったんだぞ!」
「まぁまぁ…」


太一さんがなだめるように丈さんを落ち着かせていたのにわたしが言った一言で、なぜか丈さんが太一さんをなだめることになっていた。テリアモン得意の余計な一言が移っちゃったかな…?



  目次  
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -