▼ 私の愛情あげよっか?
辺りが急に暗くなった。暗雲が通りすぎると赤い月から禍々しいデジモンが馬車を引いてこっちに飛んでくる。
「なっ…なんだ!?」
みんなソレに驚き何も言えず見つめていると馬車から棺桶が落ちてきたかと思えばパカっと開き黒いマントに包まれたモノが出てきた。
そのモノはゆっくりと地面に降り立つ。
「選ばれし子供達よ。」
「コイツよ!ピコデビモンが通信してた奴は!」
「コイツではない!ヴァンデモン様だ!」
「ヴァンデモン?」
「ヴァンデモン"様"だ!」
怪しげな笑い声で笑った後「お前たちの旅もここで終わる。」とマントを開いた。
「ナイトレイド」
ヴァンデモンのマントから無数のコウモリが出てわたしたちに向かってきた。
デジモンのみんなが各々の攻撃するがコウモリは続々と出てくる。
「キリが無いですよ!」
「パルモン進化!トゲモン
みんな伏せて!チクチクバンバーン!」
トゲモンがコウモリを一気に片付けるとゴマモンが「今だ!」と叫んだ。
「ゴマモン進化!イッカクモン
パープーバルカン!」
イッカクモンが連射でヴァンデモンに攻撃をした。それは全て当たったと思ったが黒煙の中からマントに包まったヴァンデモンが飛び出てきた。
「これで勝ったつもりか!ブラッディストリーム!」
ヴァンデモンは手から鞭のようなものを出すと高笑いをしながらみんなを弾いていく。
「太一…コイツ…つよ、い…」
「そんなぁ…」
『みんなが…』
「あたし、いかなくちゃ…」
「えっ」
「あたししか残っていないもの…」
「むりよ!そんな身体でどうしようって言うの!?」
「わかってよ空!あたし行かなきゃいけないの!」
ピヨモンが空さんの腕のなかで行こうともがいている。空さんはそんなピヨモンを行かせないよう離さないよう抱きしめていた。
「行っちゃダメ!」
「離して!」
「ダメ!行ってはダメよ!」
「どーしてわかってくれないのよー!」
ピヨモンのその言葉に空さんの動きが止まった。その隙にピヨモンは空さんの腕から飛び出した。
「ピヨモン進化!バードラモン
メテオウィーング!」
バードラモンの攻撃はヴァンデモンのマントに防がれてしまう。
「ブラッディストリーム」
ヴァンデモンの鞭がバードラモンの身体に当たりバードラモンが落下していくのを見た空さんは走りながらパートナーの名前を叫んだ。
「バードラモン!バードラモーーン!!」
その時紋章が赤く光った。
「バードラモン超進化!ガルダモン」
鳥人型の大きな翼をもったガルダモンが光をまとい降りてきた。空さんの所までいくと優しく空さんを両手で持ち上げた。
「空の愛情いっぱい、伝わったよ。」
「ピヨモン…カッコいい…」
「えぇい…肝心なところで愛情の紋章まで発動してしまうとは!」
「空はこのわたしが守る!」
ガルダモンはゆっくりと飛び上がると全身から赤い光を出した。
「シャドーウィーング!」
「ナイトレイド!」
ガルダモンの攻撃は赤い鳥となってヴァンデモンに襲いかかる。ヴァンデモンもナイトレイドで相殺させる。交わった場所が光ったときガルダモンは「今のうちに逃げよう」とわたしたちを手のひらに乗せ一気に太陽の方へ飛び去る。
ゴクウモンの時より快適にかつ酔わずに乗っていられた…
池の近くに下ろして貰いみんなその場に座り込んだ。
「なぁ?気にしなくてもちゃんと紋章光ったじゃないか!」
「気がついたらあたし。お母さんと同んなじことしてた。」
「空…」
「それでわかったの…お母さんの愛情が。」
「あたしも感じたよ!空の愛情!」
空さんは笑って退化したピョコモンをみるとピョコモンは「いつもの空に戻ってよかった!」と嬉しそうだ。
「あーあ。俺も空の愛情が欲しい!」
「ばっバカ太一!なんて事言うんだ!」
「丈さん真っ赤!」
「丈先輩。私の愛情あげよっか?」
ミミさんが丈さんに近づいて言う。「え?」っと少し嬉しそうにした丈さんだったが渡されたのは木の実だった。
ガクンッとした丈さんにみんな笑っていた。
「僕はまきちゃんの愛情がいい!」
『ぅえっ!』
「何いってるのー!?真希の愛情はボクらが貰うんだから!」
タケルくんの爆弾発言にテリアモンが反論しロップモンが頷く。
『や、え?あのね…』
「真希さんの愛情だったら僕も参加します。」
『光子郎くんまで!?ちょっとやめてー!』
ややこしくなりつつある会話についていけなくなったわたしは太一さんの後ろに逃げるように隠れた。
和やかだったのもつかの間。あたりは暗雲に包まれヴァンデモンの高笑いが辺りに響いた。
「選ばれし子供達よ。お前たち8人の力だけでは我らが闇の力の拡大を阻止することは出来ない。」
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