▼ メイヨキソンって言うんだ
「おや?どーしたのかな?コンニチハ。ボク、ピコデビモンです。」
「ピコデビモン?」
「あれ?君たちもしかしてエテモンを退治してくれた…」
「うん。」
「ありがとう!君たちのお陰でこの世界に平和に戻った!」
急に出てきたコウモリみたいなデジモン。でもこのピコデビモン…どうも胡散臭い。
「…でもどうして泣いていたの?」
「お兄ちゃんが帰って来ない…」
「ぇえ!それは大変だ!よし。ボクが探して来てあげる。」
ピコデビモンはタケルくんからヤマトさんの名前を聞くと向こう岸に飛んで行った。
その場でピコデビモンの帰りを待っているとしばらくしてから「お待たせ」と戻ってきた。タケルくんは待ってましたと言わんばかりにヤマトさんについて問いかけた。
ピコデビモンはふよふよと飛び回りながら「伝言があるんだヤマトから」といった。続いて出てきた言葉は想像もしないものだった。
「ヤマトはね、キミには会いたくないって。キミのこと大大大っ嫌いだって。もう兄弟でいたくないって。」
「うそっ…」
『嘘だよ!』
「ヤマトがそんなこと言うはずないじないか!」
「タケル泣かないで!」
「あ、ヤマトこうも言ってたよ。キミの泣き虫なとこも大っ嫌いだって。」
「うっ…うぁ〜ん!」
「タケルくん!」
その言葉にタケルくんは泣き出してしまいその場から走り去ってしまった。わたしたちはすぐにあとを追いかける。
「僕だってお兄ちゃんのことなんか大っ嫌いだー!」
走って走って疲れたころ湖の岸に辿りついた。タケルくんは泣き止んだものの暗い表情で座っている。
トコモンは「ヤマトは絶対そんなこと言わない」とタケルくんに言い続けるがタケルくんは聞きたくないと言わんばかりに耳をふさいだ。
トコモンは少し考えると1人でどこかへ向かう。
『ロップモン…』
「わかった。トコモンと一緒にいってくるね。」
ロップモンが行くのを見送ったわたしとテリアモンはタケルくんに話しかけた。
『タケルくんお腹すかない?』
「ボク何か探してくるよー?」
タケルくんは何も話さず首を横に振るだけ。わたしとテリアモンは顔を見合わせる。少し後ろに見守るように座ってる事しか出来なかった。
『ねぇ、テリアモン。』
「なーに?」
『ピコデビモンの言葉は本当じゃないよね?』
「少なくともボクの知っているヤマトはそんな事いわないよー。」
『だよね。…ピコデビモンは何でヤマトさんのことわかったのかな?』
「どういう意味?」
『タケルくんは「お兄ちゃんの名前はヤマト」とは言ったけど容姿…見た目については何も教えてないよ。兄弟だから似ていたからってこともあるけどでもすぐに見つけられるもの?それに…ヤマトさんは知らないデジモンに伝言なんか頼むのかな?』
「たしかに…」
言葉の真実は本人にしか分からないけどでも違和感は取り除かなかった。
しばらくしてから戻ってこないトコモンとロップモンが心配になり、タケルくんに探しに行こう?と誘えばタケルくんはゆっくり立ち上がった。
▼△▼
その頃トコモンが向かった先はピコデビモンのもとだった。
「タケルに嘘言わないでよ!」
「嘘?なにが嘘なんだよ。」
「ヤマトがタケルのこと、嫌いだって!」
「おや?どうしてそれが嘘なんだい?嘘って証拠は?ハッ、証拠もないのに疑ったのかい?知っているかい?そう言うのメイヨキソンって言うんだよ。」
「じゃあ聞くけど、ヤマトが言ったこと本当だって証拠は?」
ゆっくりとした歩みでトコモンとピコデビモンの側まで歩いてきたロップモンはピコデビモンに逆に問いかけた。
「ロップモン!」
「証拠?ボクがしっかり聞いたんだ。それが真実だよ。」
「キミも証拠はないじゃない。」
「なに言ってるんだか…そうだ。場合によっては裁判を起こせるんだ。法廷で争うかい?」
トコモンはイライラが積もりピコデビモンに泡で攻撃した。
ピコデビモンが泡に当たった瞬間に運悪く状況の知らないタケルくんとわたしたちが居合わせてしまった。
「何してるんだ!トコモン!」
「何って…」
「今乱暴したでしょ!」
「タケル、トコモンを責めないで?コドモだからボクとタケルが仲良くしたことに嫉妬しただけさ。そうだよねトコモン?」
その言葉にトコモンはまたイライラとしたようにそっぽ向いた。
タケルとトコモンはピコデビモンに「謝れ」「やだ」の言い合いが始まった。
『ロップモン!』
「真希。テリアモン。」
『どんな状況?』
「それが…」
「どうしても謝れって言うんならボク出てく!」
「あっそう!だったら出ていったら!」
売り言葉に買い言葉。トコモンとタケルくんはまさにそれ。タケルくんは「もう敵もいないしこれもいらないや!」と言うとデジバイスと紋章を投げ捨ててピコデビモンと反対方向に走り去った。
『テリアモン!タケルくんを!』
「りょーかい!ロップモン、真希を頼んだよ!」
「うん!」
テリアモンはタケルくんたちを追いかけていった。
トコモンはタケルのばか!ばかぁ〜」と泣き出してしまった。
最近はみんなよく泣いてばっかり…
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