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待ち合わせの朝10時。
やっぱり彼は忙しそうで、また何か良いことをしてるのかな、なんてぼんやりと考えた。

何時ものこと。私は彼のそんな所が大好きだから、なんの不満も無く彼を待つ。

30分経過。待ち合わせの場所はファミレスだったから中で待つことにした。飲み物を注文して、私が彼を好きになったころの事を思い返してみた。




あれは高校三年の時だった。
持久走をしてる中で、彼はずっと下を向いていた。

最初はなんだか暗い印象を受けた彼をただ何となく見つめていたら、下を向いている理由がすぐにわかった。

花を、避けている。


ああ、こういう人なんだなぁと感心した。一年の時、彼は何かと頼まれ事をされやすい人だった。それはきっと彼の優しさが周りの人にわかるからだと、思ったりもした。
姉が引っ越して約一年半経ったその時の私は何かと心に寂しさを感じていて、彼みたいな人と一緒にいれたら、どんなに良いだろうかなんて考えた。


その優しさが、私にあった不安を取り除いたから。


それからだった。ある情報が私の耳に入ったのは。

「―君って、巳鐘の事好きみたいだよ?」

どこからの話なのか、ただの噂だったのだけど。

私はとても嬉しくて、彼と友達になった。

お互いの気持ちをはっきり聞いた訳でも無かったけど、自然と一緒に居て、周りからは付き合ってると思われた。





そんな曖昧な感じで今に至る。まだ彼は来ていない。
少しの間、うたた寝なんてしちゃおうかな。彼が起こしてくれたら良いな、なんて。




あれ、彼が居る。
私、寝たんじゃなかったのかな。

まぁ、いいや。会えたから。
なんで黙ってこっち見てる

「巳鐘、俺は巳鐘が幸せならそれで良いから。俺はこんなに遅れてくるし、なにより、わからないんだ。その、あ、愛しかたというか・・・・・・。だから、――」


なんて、言ったの?
別れ、よう?

私は、そんなモノいらないのに。
ただ側に居ることを望んだのに。







「―鐘、巳鐘。」

気がついたら目の前には心配そうな顔で―といっても相変わらず無表情なのだけど―私を見ている彼がいた。


どうやら夢を見ていたらしい。私の頬には涙を流した跡があった。


「本当すまない。寝るような時間待たせて・・・なにか怖い夢でも見たのか?」

――見たよ。

「ううん?忘れちゃった!」

―私は嘯く。

「―そうか。疲れてるんだな。」

そうなのかも、なんて続ける。

今は彼が私を不安にさせる。
私の勝手なのだけど。

「大好きだよ、柊君。」

なんの前触れも無しに呟いたら彼はきょとんとしてるような気がした。



君を待つ時間は、


(―不安だけど幸せな時間。)




巳鐘と夜緑宅柊カップル。


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