こちらに背を向けると無防備で落ち着かないが間近に向かい合うのも寝つきが悪くなると言っていたころが懐かしい。狭いセミダブルベッドの上だというのに壁にぴたりと背をつけて極力距離を取られていた初めのころのことを思い出し一人笑いを忍んでいると、何がおかしいんだとまだ起きていたらしい男の掠れた声が首の後ろから這い寄ってきた。響くような低音に耳がこそばゆくなって身を捩りながら先生も変わったよなあと思ってと言うと自覚がないのか「僕が?」と不愉快そうな声色で露伴が肩口に鼻先を触れてくる。だって前は他人がいるところでちゃんと眠れなかったじゃないかと腹の辺りですわりのいいところを探してごそごそやっている節くれだった手を捕まえてやれば、もう慣れたのだと簡潔な答えが返ってくる。
 眠れるのは君の隣だけだ、露伴は言う。
 まあ枕みたいなもんだなと間髪入れずに可愛げのない補足をされ、そういえば以前三日ほど外泊して帰った際すっかり顔が青白くなって半開きの目の下に青紫の隈を携えていたことを思い出した。神経質な露伴は旅行先の宿へ行くと枕が違うから眠れないなどと言って徹夜の旅館探索を決め込む。本当に枕代わりかとムッとしてじゃあどうして睡眠の質を下げるようなことを慣れるまで我慢したのかと、ついでに言えば寝不足続きで不健康に磨きをかけていた露伴を心配してソファで寝ようとしたときに駄目だと引き止めたことも付け加えて少しばかり棘を含ませた問いを投げかけると、露伴はうなじに顔を突っ込んだまま深々とため息をつき、そんなことも分からないのか鈍ちんめと気だるげに罵りを零し改めて抱き枕たるこの身を抱きこめると早く寝ろと無愛想なおやすみを言った。

露伴と添い寝



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