何かごそごそしていると思ったら人が宿題をやっている後ろで億泰はもう布団を敷いていた。寝るのかと聞けばまだだと答えたくせに、いそいそと布団の中に潜り込み横向きに丸まってじっとしている。
 宿題を終わらせて当番の食器洗いをし、風呂に入ってみても億泰はまだ起きていて、どうやら布団の中で漫画を読んでいる。表紙を覗き込むと自分が貸した古いやつだった。「まだダメだ!」と怒られて良く分からないまま捲り上げた布団から手を離す。億泰はさっと布団を引き上げてまた肩口まですっぽりと被さると、少し身震いしながらまた漫画を読み始める。もう一度寝るのかと聞くも、紙面に視線を落としたまま「これ読んでから」との答え。
 これ、というのが手元の一冊なのか枕元に積み上げられた数冊分なのか察しかねて聞きなおそうとしたが、突然の寒気にぶるりとしてやめた。億泰の寒気が移ったのかもしれない。残暑が続くと思って油断していたが、暦を思い返せばもう秋も半ばだ。がしがしとタオルで頭を引っ掻き回しながら洗面所に戻って歯を磨き、億泰のドライヤーを拝借する。毎朝女並みに時間がかかっていると思ったら風が妙に弱かった。今度電気屋にでも誘おうと思いながら部屋に戻り、電気を消して億泰の隣に潜り込む。
「うわ、あったけえ」
「だろォ〜?」
「お前もしかして暖めてたの?」
 億泰はへへと笑って手元の漫画を他のに重ねる。
「猿だな。猿だお前は。苦しゅうないぞ」
「なんで時代劇口調なんだよ?」
「おいー昨日日本史でやったばっかだろー」
「あ〜、ドラゴンボール読んでた。セルのとこ」
「ピッコロいいやつだよな」
「な〜」
 そのあと誰が一番強いとかそんな他愛のない話をしながらお互いの体温にうとうとして、おやすみを言う前に眠りに落ちた。

億泰と添い寝



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