「オレ、潔癖症なんだ」という言葉に鈍器で頭を殴られたような衝撃があったのは発言者がメローネだったからに他ならない。チーム一不純なスタンドの、チーム一不埒な格好の使い手は、潔癖症という言葉から連想される人物像とはかけ離れていた。
「露出ならリゾットだっていいとこだろ。ほら、手袋外せないんだ」
見せびらかすように掲げられた両手に、そういえば彼の手首から先が生身なのを見たことがなかったと気づく。触れないのに子供が作れるのかと聞くと、メローネは無表情のまま「ヤるのはおれじゃないからな」と手元の親機を手袋を介して優しく撫でた。自分のスタンドにも触れないのかと、そう零した際には「まあね」と口元だけで笑ってみせた。
「君はいい母親になれるよ」
その日の仕事が終わったあと、水溜りを避けて歩く子供の如く、血溜まりと肉片を踏むまいとするメローネの足取りに症状の鱗片を見た。
私は足元など気にも留めてなかったが、しかし彼の言葉にデジャヴを感じて立ち止まった。確か初めて組んだときのことだ。様子からしてわざとだろうと踏んで、私も前と同じく「あんなのの子供産むなんてイヤ」と返したが、その次の「じゃあ、おれの子供は?」というメローネの台詞は前にはなかったものだった。
「オレの子供なら産んでくれるの」
近づいてきたメローネが私の頬に手を伸ばす。ほのかに湿り、確かな温度を持った指先を頬に感じ取って初めて、私は手袋の不在に気づいた。
隔たりA