放課後になり私は帰り支度をしていた。そこで隣の席のベルくんが机の上に項垂れながら声をかけてきた
「今日からなまえの家とまっから」
「・・・へ?あ、はい。わかりました」
「その敬語いいかげんやめね?」
「・・じゃあ、止める。夕飯はなにがいい?」
「なまえの手料理」
「了解。じゃあ帰ろ?」
席を立ち上がって2人肩を並べて帰る。その姿を恨めしく見つめる女子に優越感を感じながら私はその子たちに嘲りの笑みを送って教室を出た
家に着いてから教室移動の時、理科室にノートを忘れた事に気がついた。面倒くさいが取りに行かないわけにはいかない、まだ部活もやっている時間で学校も開いているし夕飯の食材も買いに行こうと思っていたところ。ついでに取りに行こう
ベルくんは漫画を読んでいるし連れ出したら迷惑だろうと思い「買い物に行ってくる」と、一言告げてから家を出て学校の理科室に向かった。
手の届く距離の君
「あっ・・・」
「あ゛?」
「ノート取りにきただけなので」
理科室には髪を一つに結い白衣に身を纏って眼鏡をかけ薬品を手にする獄寺くんの姿があった。私の姿を見るなり眉を寄せて嫌な顔で見られたが、用を伝えればまた薬品に視線を戻した。
「あれ・・・ノートがない」
「・・・、これか?」
「あ、ありがとうございます」
何故か獄寺くんの手元にあった私のノート。差し出され、それを受け取ろうとノートを掴んだが獄寺くんが手を離してくれない
私が嫌な顔をしたのに気がついたのか獄寺くんは口を開いた
「アイツとはどんな関係なんだ?」
「・・・ベルくん、ですか?彼は私を殺し屋から守ってくれた王子さまです」
「殺し屋?」
「貴方こそ何者ですか?暗殺者のベルくんと知り合いみたいだし、ダイナマイト常時装備って明らかに普通じゃない」
「けっ、てめぇに関係ねぇよ」
「そうですね、でも私が苛められているのは貴方のせいだと言う事をお忘れなく」
関係ないと言われ腹が立ち、そう言いノートを奪い取って理科室を後にした。獄寺くんが何か叫んでいるのが聞こえたが私には関係ない。あっちが先に関係ないと言ったんだから
「ただいま」
「遅ぇじゃん、王子腹ペコ」
「いま作るから先にお風呂はいっててくれる?」
「ん、」
下着類は持っているようなのでタオルだけ手渡し、私はキッチンに向かった。買ってきたものを冷蔵庫にしまい夕飯を準備する。ごはんは炊いてあるし、おかずを幾つか作ればいいだろう
お風呂からシャワーの音が聞こえる、男の子と関わりの無かった私が会ったばかりの素性も知らぬ男の子と同棲なんて、世の中なにが起こるか分からないものだ
「なまえ!」
風呂場からベルくんの声が木霊して聞こえ、何事かと手を拭いてベルの元に向かえばニヤリと笑う口元から聞こえた言葉
「自分で髪洗ったことねぇーんだけど」
「へ・・・あ、王子さまだもんね、分かった。私が洗うよ」
「・・・服、脱がねぇーの?」
「脱ぎません」
「下手」だの「30点」だの散々な文句を言われ、途中から水の掛け合いが始まって、上がる頃にはびしょびしょになっていて、それが可笑しくて私は笑った
我が侭で身勝手でハチャメチャで直ぐにナイフ取り出すけど、私の孤独を埋めてくれてる王子様。ベルくんといると少しだけ強くなれたような気持ちになれるの