眠っても眠らなくても朝は毎日変わらずやってくる。学校は大嫌いだ、それでも私が行くのは弱い奴だと思われたくないから、こんな事で負けたくないから。もう心も体もボロボロでそれどころじゃ無いけどね
「いってきます・・・」
誰の返事も返ってこない。否、誰もいないのだ。もうそれに慣れてしまった、私のせいで周りから嫌な目で見られて嫌がらせされてママもパパも私の事嫌いになって出て行った最低な人間だ。だけど今さら涙は出ない。もう枯れきって理性的な涙しか零れないのだ
そんな事はどうでも良い、それよりも昨日の王子との出会いはただの夢だったような気がして胸が痛い。会いたい会いたい王子さま
さぁ物語が始まる
学校に着けば、いつものように悪臭を放つ下駄箱。開ければきっと酷い事になっているのだろうが見なければ良い開ける必要もない。鞄から上履きを出して今まで上履きを入れてた袋に靴をしまう
珍しくトラップのないドア。教室に入る私に向ける皆の視線は酷く冷たい、ただ静かに俯いて私は自分の席に座った。気のせいだろうか、今日の嫌がらせは比較的に軽い。いや、私なんかよりも別の話で持ちきりのようだ
「男の子かな?女の子かな?」
「あっ、私さっき見てきたよ超かっこ良い男の子!」
「まぢで?!わー楽しみぃ」
転入生でも来るのだろうか、まぁ私には関係ない。ただ、敵が増える。それだけの事。
それからすぐにチャイムが鳴って担任が入ってきた、担任は私と目が合うとあからさまに嫌な顔をして逸らしてからドアの外にいる転入生に向かって「いいぞ、入って来い」と声をかけた。
その瞬間、女子の黄色い声が教室を包む。それから間抜けな沢田くんの「何でアイツがいるんだよ」なんて声も。何だ?知り合いなのか?
「はぁ?王子に命令とか何様?死ねよ」
「な、なななナイフをしまいなさい」
「うしし、やーだ♪お、なまえじゃん。オレあいつの隣の席ね」
ドクン、胸が痛みだす。なんで、なんで彼が、王子さまが此処にいるの?もしかして本当に守ってくれるかも、そんな思いが込み上げる。いや彼を信じなかったら裏切り行為になってしまうので守ってくれると信じているが
ああ女子の視線が今までに増して痛い。
「はーい質問!ベルくんのその髪本物?」
「王子に偽者とかねぇーし、てかベルくんとか馴れ馴れしくね?」
「質問質問!好みの女の子は?!」
「オレに似合うお姫様」
「みょうじさんとはどんな関係なんですか?」
「オレの姫様に決まってんじゃん」
その瞬間クラスの空気が少し変わった。男子は「馬鹿じゃねぇのアイツみょうじが姫だって、キモ!」などと叫び、女子は「本当みょうじさんありえないよね、きっとまた脅したのよ」なんて根も葉も無い勝手な妄想が上がった。
そうやって私への嫌がらせがエスカレートしているのかと思うと腹が立つ
「何でもいーけど、アンタ席変わってくんね?」
「まぢで良いのか?やったあ!みょうじの傍からやっと離れられるぜ」
「カチーン、しね。」
ナイフを何処からか取り出すとひゅいっと投げて、スッとその男子生徒の頬に傷をつけた。ぞわぞわとしていたはずの教室が瞬時にシーンと静まり返る。転校初日からやってくれるぜ王子さま