週が明けて月曜日、ベルくんはまだ帰ってきていない。代わりにスクアーロさんが「何かあったらすぐ駆けつけるからな」と言ってくれた。どうして私を助けてくれるんだろう?それに違和感がある、だってどう考えても偶然に偶然が重なり過ぎじゃないか?
とある殺し屋を殺しにベルくんが来て結果的に私を助け、私を守るためだと並盛中に転入。瀬川さんのファミリーが沢田綱吉のいるボンゴレファミリーとやらの乗っ取りを遂行しているが証拠がない。
しかもベルくんもボンゴレ。もし乗っ取りが本当なら敵を潰すのが普通。でも今は証拠がない、それにそういえば赤ん坊が言っていたな
「マフィアは一般人に手を出してはいけない」
ねぇ・・・、これじゃあ私が名目として利用されてるようにしか思えないよ
「気が付きたくないのに、気がついちゃった」
そう零した独り言は誰にも聞かれず私への罵りと雑音に消えた。
王子の約束は唇に
家に帰れば待ち焦がれた人の靴がひとつ増えていて、急いで部屋に入って抱きつきたかった、昨日までの自分なら。でも今はそんな元気はない
「帰ったかぁ!」
「ただいま。とりあえず着替えて来るね」
「何だし、そっけねぇーの」
ベルくんの声を聞いたのは、およそ4日ぶり。なのにやけに懐かしく聞こえて涙が出そうだった。それでも抱きしめに行けない自分に苛々する
自分の部屋に入り、裂かれたために昨日新しくかったばかりの制服を脱ぎ捨てて、あまり肌に密着しない緩い部屋着に着替えて、リビングに行った
「ベルくん、お帰りなさい」
「ただいまなまえ、てかさっさと帰れよカス鮫」
「う゛ぉ゛ぉ゛い゛!!!なんだテメェその態度はぁ!」
「うっせ!なまえ、守ってやれなくてごめんな」
そんな顔しないでと言いたかった。前髪で目が見えなくても伝わってくるような、そんな顔しないでと、もう良いじゃない。さっさと終わらせてしまえばいいのに
「ベルくんのこの任務いつになったら終わるの?」
「は?」
「う゛ぉ゛い゛・・・どうしたんだぁ?」
「・・・何でもない、ごめんなさい。お風呂入ってくる」
何言ってんだ私、自分で自分が保てなくなってどうするんだよ。これじゃあただの八つ当たりになっちゃう、でもこのまま溜め込んだら、ベルくんに信じるって約束破った、って事で殺されるよりも先に私が壊れて死んでしまいそうだ
服を脱ぎ捨て風呂に入りシャワーを浴びる。痣は体を洗うときが辛いが切れてる部分は常に刺すように傷む、だが我慢する他ない。ゆっくりと浴槽に入り、体を温める
「はぁ・・・、ッ、痛いなぁ・・・はぁ、」
「さっきから溜め息つきすぎだぜ」
「ッ?!ベルくん?何で」
「酷い傷じゃん、跡残るんじゃね?」
「ッたい!抉らないでよ!てか出てって下さい」
「やーだ。言うこと聞くと思ってんの?」
思ってない。
だって俺様何様王子様だもんね、だからお姫様なんて山ほどいるんでしょう?私なんかに惹かれる要素がない事ぐらい初めから自分で気が付いてるよ。それでも私がベルくんに魅了された事に代わりはなくて
思わず口からポロリと零れる
「瀬川さんのファミリー潰して早くイタリアに帰れば良いのに」
「・・・は?オレに消えて欲しいって事かよ」
「違う。そんなワケない!でもこれ以上ベルくんを好きになったら離れられなくなる、だっていつかは帰っちゃうんでしょ?遠い国の王子様に片想いなんて・・・、御伽噺じゃあるまいし耐えられない」
湯気で顔ははっきり見えないだろうけど今の私は随分酷い顔をしてると思う。自分にこんな女々しい所があったなんて、ベルくんが居なかったら気が付かなかっただろう
「なに勝手に解釈しちゃってんの?」
「へ・・・っ」
頭を右手で掴まれたと思ったらぐっとベルくんの方に寄せられて、彼の唇がそっと自分のと重なった。温かい、湯船に浸かっても温まらなかった心がほっと火を灯ったような感覚に陥った
「あの女殺したら、なまえ連れて帰るし」
チラリと見えたベルくんの目は優しくも殺気立っていた