王子様、 | ナノ
ベルくんがこの学校に来てから2週間ほど経つ。色々と問題はあったが、ベルくんを恐れてか今までよりも苛めは減った。と言っても暴力的な苛めという点だけで陰湿なねちっこい苛めは多々あるのだが、それはもう慣れてきた
「はぁ、毎日毎日よく飽きないなぁ」
「なまえ臭くね?」
「私じゃなくて机に詰め込まれた生ごみが臭いの。ベルくんも臭いけど?」
「オレのはまだギリギリ食えるレベルだし」
いや食べれないでしょと笑いながら話をしていればクラスメイトはより殺気を込めて睨んでくる。楽しくなるが、とりあえず吐きそうな異臭を放つ机を・・・少し怖いが風紀委員に取り替えて貰えないか頼んでみようかな、それから上履きも捨てないとな
「あ、」
「どーしたの?ベルくん」
「そういやオレ一旦任務でイタリア帰るんだった」
「・・・・・・え?」
王子様を信じます
ベルくんは次の日イタリアに戻っていった。行く間際に「すぐ戻るから待ってろよ」なんて言われて私も「大丈夫だから」なんて言ったけど、大丈夫なワケないんだ。私は別に強くなったワケでもなんでもない。ただベルくんに守られていただけなのだから
「おい、今日はみょうじひとりだぜ?」
「よーし久々に放課後やってやるか」
男子の声が耳に届いて少しだけ怖くなる、でも大丈夫。王子さまが守ってくれると言ったから・・・、何言ってんだか。傍にいないのに守れるわけがないじゃない。
成長できない自分に、なんだかイライラして私は席を立って屋上に向かった。その途中の階段で嫌な人に出くわしてしまった
「あ、なまえちゃん・・・今日はアイツいないんだね?」
「瀬川さんに関係ないじゃない」
「そうだね」
そう言いながら天使のように可愛く微笑んで、立てなくなりそうな程に強い殺気を私に当てる
「あぁそうだ・・、なまえちゃんのこと殺そうとする度にアイツが邪魔するし、なんかあなた最近ムカつくから、沢山苛められて苦しんでから殺されて?」
「瀬川さんって、何者?」
「ふふ、特別教えてあげる。簡単に言えばマフィアの娘だよ」
「マフィア・・・なんか現実離れ過ぎてついてけ無いな」
「ふふ・・・ツナくんもマフィアだよ?まぁファミリーは違うけど。それから本当のコト言うとね、なまえちゃんの信じてる王子様は、ツナくんと同じファミリーで・・・あ、わたしそろそろ行くね?ばいばい」
そんなコト言われたぐらいじゃ動揺なんかしないんだから。でも不安に襲われているのは本当で、ベルくんのこと信じているけど・・・出会ったばかりの彼を心の底から信じるなんて、人間不信な私には無理だ
「おいみょうじ!体育館裏、今すぐ来い」
「・・・・・・・・・」
クラスの男子5人が私を呼び出した。瀬川さんが走って教室に戻っていった理由はこれか、彼らが来ることを知っていたのか。まぁいいや、行ってやろう。今は何もかもがどうでも良い、殴られたら少しは頭もスッキリするよね
「アイツといいお前といいうぜぇんだよ!」
「いい加減くたばれよ!」
「・・なぁ、俺やりてぇことあんだけど・・・こんな最低な奴になら突っ込んでも問題ねぇよな?」
お前は動物か、と言いたかったけれど、それよりも早く名前も知らぬ男子が私の制服に手をかけて引き裂いた。私の馬鹿、ほいほい来るんじゃなかった。
恐怖心で手足が震える、そして本能的に男子の顔面を殴っていた。しかし相手は男5人、無力な私が適うわけも無く鳩尾を殴られてその場に伏せてしまった
「う゛っ・・・がぁ・・・っ」
「ってーな!ふざけんなグズ女!」
「まぢでてめぇの使い物にならねぇくらいやってやるよ」
「おい、手足押さえとけよ」
「や、め・・・」
怖い、怖いよ王子様。守ってくれるんでしょう?助けてよ、私を殺さないで
ただの暴力ならいくらでも耐えられる、でも性的暴力なんてされたら正常に生きていけない
カッターナイフで制服が裂かれ、動いて皮膚まで切られてしまった。赤い赤い私の血、最近は暴力なんてあまり無かったから久々に見てゾクリとした
「暴れんなってんだろ!」
「うぜぇ、殴って気絶させてやろうぜ」
気持ちの悪い手が私の肌をなぞったあと、殴る蹴るの暴力で私の視界はブラックアウト寸前になった
薄れゆく視界に映ったのは綺麗な銀髪