葛西さんと姪っ子 | ナノ




いつの間に乗せられていたのか目覚めたのは車の中で、家の前に着いてから叔父は私に降りる様に促す。降りて外の空気を吸ってから空を見上げれば、太陽はもう高い位置にあった

家の前まで行き、鍵を開け自分の部屋に入りベッドに倒れこんだ。まだ寝たり無い・・・目を瞑って枕に顔を伏せていれば玄関の開く音が微かに聞こえたが、叔父を迎える気さえ眠気で消える

ガチャリ、私の部屋のドアが開いた


「腹へってねぇか?」

「うー・・・ん・・・、・・・うぅ・・・」

「何が食いてぇんだ?」

「お・・・じ、ちゃ・・・ん・・・」

「・・・火火火、一緒に寝てやろうか?」

「昨日も・・・いっしょ、に寝・・・た」



頭は半分以上寝てるがそれでも声を絞り出しながら話す私に叔父は近づいて私の眠る布団の中に潜り込む。煙草の匂いはうつりそうな程近く手は私の頭を優しく撫で首の後ろに落ちて首をくすぐる

・・・昨日も思ったけど、これやっぱりセクハラ・・・まぁ、気持ちいいから気にならないけど


「なぁなまえ・・・、」

「んぅ・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・お、おじちゃ?何してん、ちょ近、近いッ!!!」


いっきに目が覚めてしまった。急に黙った叔父に違和感を感じ目を開ければ目の前にある叔父の顔。驚きで勢い良く起き上がったのは良いが、ドクドクと胸が煩く鳴っておさまらない、叔父は少しだけ残念そうに楽しそうに「後少しだったのによぉ、」なんて言って笑った。このオヤジ・・・何考えてんだ。叔父は少しなんかじゃない相当変わった

左手で口元を押さえながら私が睨むのを無視して叔父は起き上がって私の手を引いた


「飯食いに行こうぜ?」

「あ・・・うん、」


できればもう少し心臓に悪くない起こし方を願います







駅の近くのファミレスで食事をする事になった

叔父はお腹が空いてないのか私がハンバーグを頬張っているのを煙草をふかしながら見つめる。こうも見られていると食べにくいのだが・・・、叔父がニコリとしているので何も言えない

今の時刻は2時過ぎ、平日な事もあり普段友達と来る時よりも店には人が少ない。結局別の事で盛り上がってしまい昨日聞けなかった事、今なら聞けるかもしれない


「ねぇ、おじちゃん?」

「ん?」

「昨日の人・・・「シックス」、は何を考えてるの?」

「んー・・・火火火、パフェも食うか?」

「食べるけど、何で話そらすの?」

「なまえはまだ、知らなくていい。ほら注文しな」


そう言って叔父はボタンを押して店員を呼び苺パフェを頼んでくれた。しかし、「シックス」の話題に入らせる気は無い様で、さりげなく聞いても一切答えてくれなかった
叔父の機嫌を損ねるのは私としても止めておきたい所。諦めて苺パフェが来るのを待つ事に

暫くしてウェイトレスが苺パフェを運んで来た。スプーンですくって口に入れればアイスの冷たさが広がる。美味しいけど納得いかない、これじゃあ泣いてる子供にアイス買って黙らせるのと同じような事じゃない


「俺にも一口くれねぇか?」

「へ?あ・・・うん・・・、あ、あーん」

「あーん、」


これは予想に反し相当恥ずかしい。頬が熱くなったのを感じる。スプーンを持つ手は震えるし、だいたい叔父の「あーん」って可愛すぎる!!!何歳だと思ってるんだ・・・自然と叔父の口元に目がいき口端の緩んでしまう。叔父は食べ終え舌でペロリと唇を舐めた
なんか・・・え、エロい・・・叔父って昔からこんなんだったっけ?いや、そんなはずは


「どーした?なまえ」

「おじちゃん・・・なんか変だな、って。すっごい触ってくるし、さっきだって・・・」

「「さっきだって、」・・・なんだ?」

「顔近づけて「後すこしだったのに」とか言って何するつもりだったのよ」

「何って、ちゅーとか?今時の女子高生じゃ普通だろ?」

「ふっ、普通じゃないよ!!そんな・・・」

「火火火、なまえは変わらずうぶだねェ」


そんな事を言いながら手を伸ばし、わしわしと私の頭を撫でた。完全に子供に見られてる・・・もしかして、あれ?あの時の私がまだ小さかったからしなかっただけ?じゃあこれが素!?
ピクピクとするのを抑えて少しだけ悩んだ叔父を見上げて小声で問う


「私の事、馬鹿にしてるでしょ」

「じゃあなまえはした事した事あんのか?」

「な゛っ・・・、何をよ!?」

「何ってそりゃあ・・・顔が真っ赤だぜ?火火火」


自分でだって赤くなってる事は気づいてる、だからこそ恥ずかしい
確かに華の女子高生、しかし私に触れる以上のキスの経験ましてやそれ以上の事などした事がない。気になる男子がいた事もあった、告白された事もあった。でも付き合う気など起きなくて、なんと言うか魅力を感じないと言うのが一番正しい表現の気がする。魅力・・・か、叔父が魅力であふれてるからなぁ

ところで叔父はどうなのだろう・・・逃げ回っては放火して、彼女の2人や3人いるのだろうか?もし、そうだとしたら少しだけイラッとくる。この感情が嫉妬なのかどうかは良く分からないけど、言うなれば自分を可愛がってくれる父に愛人がいる感じだ


「もう行けるか?」

「うん、ごちそーさまでした」


長いスプーンを空になったパフェの容器に入れ、鞄を持って立ち上がった。叔父はもうレジで会計を済ませている、少しだけ早足で叔父のところに行き一緒に店を出た


外は、此処が駅の近くである故か主に学生が来る時よりも少し増えていた。のまれそうな程の人数では無いが叔父は私の手をとって歩き出した、叔父の優しさが嬉しい、だが先程のやり取りを思い出すと素直に優しさと思えなくなる

まさか真昼間から援交に見えたりしないよね?


「あ!そーだ」

「ん?」

「私、買い物あるから・・・」

「じゃあ、おじちゃんも付いてってやるよ」

「・・・・・・・・・」

「・・・わーったよ家で待ってる」



叔父は一瞬止まってから悩み、私に背を向け小さく手を振って帰って行った。やけに素直な叔父に違和感。まぁ、これでゆっくり買い物ができる

忘れるところだったが今日から夕食は2人分なんだ、しかし家にある食材じゃ絶対に足りない。此処が駅の近くで良かった、面倒だし今日はスーパーでいいや・・・と、スーパーに入ったのはいい

そこで鞄の中を見て気が付いた


「財布が無い・・・」


ファミレスの中ではあった筈なのに、いつ落とした?頭をフル回転させても答えは出ず、気が重くなるだけ。これじゃあ食材が買えないだけじゃなく家にも帰れない、携帯も叔父に取られたままで連絡もできない。いったんスーパーを出て、地面を探しても見つかるわけが無く、諦めて歩いて家に帰ろうと思ったその時


「・・・おい、」

「は、はい?」

「これ、テメーのだろ」

「あ、財布・・・」


目の前の男の手には私の財布、ベタな展開だが財布が見つかってよかった
礼を言おうと男を見上げて私は口端を引くつかせる。何てったって、私の大嫌いな金髪と唇にピアス(?)の一生の内にこの手の輩と関わる事は無いと思っていた事もありどう対応したらいいのか分からない

お礼に何かしろ、とか言われたらどうしよう・・・


「今度は気をつけろよ、じゃあな」

「え、それだけですか」

「あ゛ァ?」


変な心配を無駄にしていた事もあり男が去って行ってしまうのが予想外で変な事を言ってしまった。そのせいで男はピキッとした怖い顔で振り返る、私の馬鹿


「な、何でもないですスミマセン・・・そうですよ人は見た目9割って言葉がありますけど見かけによらないって言葉もありますしね」

「喧嘩売ってんのか??!」

「違います違います。あ、有難う御座いました本当助かりました」

「ハッ、変な奴だな」


どうやら全てのチンピラが悪い奴ではないようです。変な奴って言われたのは初めてだけど、彼が怖いのは変わらないが何が可笑しいのか笑う彼を面白い人だなぁ、と私はじっと彼を見つめる。私の視線に気がついたのか男は私を見て、再び「じゃあな」と言って後ろを向く


「本当ありがとうございました!!」

「もういいってんだろ」


バツ悪そうに首の後ろを掻きながら呟いて、男は人ごみに消えていった。彼はきっと恥ずかしがりやさんって奴なんだろうなぁ。まな何にせよ、よーし!これで晩御飯が作れる。適当に買い物を済ませ、叔父の笑う顔を思い浮かべながら急いで家に帰った




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