おはなしまとめ | ナノ

吭ツ計無く交わる肢体


俺は何をしているのだろう。この所、全く城内に熱を感じぬ。俺が冷めると此処まで冷え切るものなのか・・・。しかし最近ではそれも慣れてきてしまった。嫉妬で佐助に冷たくあたり、全てのモノを蔑みの類の目で見下し、その結果がこれか。

嗚呼、お館様に会わす顔が無い。上杉殿の元へ出向いておられるから良いものの、お戻りになられたらなんと言われるやら・・・、情けない。こんな事になったのは俺が恋などしたからか?今なら分かる、豊臣殿の申していた言葉の意味が。真、愛とは人を狂わせるものだ。




団子を城に届けるよう指示し、なまえ殿が来るのを待った。数日ぶりに見るなまえ殿はやはり愛おしく、だがその目は俺への不安感と恐怖で震えていた。違う、違うのだ。俺はそんな顔で見てほしいのでは無い。気がつけばなまえ殿を押し倒し、感情のままに問いつめ抱きしめていた。混乱しているのだろうがなまえ殿は必死に抵抗をする。


「幸村様・・・お、お止め下さ・・・ッ」

「ここにいるのが佐助であれば、俺の想いになまえは答えてくれたのか?」

「な、何をおっしゃっているのですか」


こんな事をしてもなまえ殿を傷付けるだけだと分かっていても、もう止められない。僅かに震え怯える姿はまるで兎のように可愛らしい。シュルシュルと帯を解いて脱がしてゆけば、発育途中の僅かな胸の膨らみが現れた。そっと触れれば、反射的に漏れた可愛い声が耳に届く。俺のしている事に反応しているのだと思うと無性に興奮した。


「なまえ・・・、俺が好きか?」


もう一度。耳元で優しく問うがなまえは首を横に振って「やめて下さい」と泣くばかり。それでも気にせず脱がしてゆけば佐助の名を声に出して涙を流しだした。


「なまえをこんなにも愛おしく想っていると言うのに」


何故、俺では無く佐助なのだ
何故、俺では駄目なのだ

悔しさと不甲斐なさにギリギリと歯を食い縛り、吐き出したい言葉を胸に留めた。この言葉を口にすれば己自身を更に傷つけてしまう。

情事の経験は無いものの、書物等での知識はある。試しに胸の突起に吸い付けば本心とは裏腹に自然と喘ぎ声が洩れる。きっとなまえは、この状況で感じてしまう自分を憎むのであろう。とても辛そうに泣いている。それでも止められない。これがなまえとの最初で最後なのだから。
俺の身勝手で苦しめて最低なのは分かっている。なまえが佐助を想っているのも重々分かっている。だから、どうかこの時だけは、無理矢理でも良い、嫌われても良い、一瞬でも良い、俺だけのものになって欲しい。


「幸村、様ぁ・・・ッ」

「ッなまえ・・・、」


元々感じやすい体質なのだろうか、もう陰部が物欲しそうにヒクヒクとしている。そっと陰部を舐めればねっとりとした甘い愛液が舌に絡みつき、主張の激しい突起は待っていたとばかりに舐められるのを喜んだ。指を入れて解してやれば快感に耐えかね俺に抱いてくる。この行為さえ愛おしい。駄目だ、どうしても手放したくないと思ってしまう。


「俺を、忘れるな・・・ッ」

「ん、ぁ・・・」


ずぷりっと良い音を立てながら、なまえの中に俺が入って行く。初めて経験する全身が震えるような快楽に己を失いそうになりながらも、なまえの表情を、匂いを、身体を、決して忘れぬようにと焼き付ける。此処まで来ると流石に力も残っていないのだろう、なまえが抗う事はなかった。


「なまえ、・・・好きだ・・・好き、だ」

「・・・幸村様ッ・・・あぁっ」


俺の全てをなまえに吐き出し冷静さを取り戻した時、何もかもを失った現状に涙が溢れそうになった。無く権利など、無いと言うのに。横に伏せるなまえの肩はまだ小刻みに震えている。


「すまぬ・・・なまえ殿、赦されるとは思っておりませぬ」


呟いた俺の言葉になまえは首を振りながらゆっくりと起き上がり、俺を見つめた。その顔は涙でぐちゃぐちゃで、途端に罪の意識による胸の苦しさが訪れる。それでも、恐らく視界にも入れたくないであろう俺をなまえはしっかりと捉えていた。


「幸村様、謝るのは私の方なのです。幸村様が私に好意を持って下さっていた事は気がついておりました。しかし身分があまりにも違います故。自分が苦しまぬよう、諦めて頂くため幸村様に「佐助様が好き」と思い込ませたのです。ごめんなさい。私、幸村様に好いて頂けるほど、素敵な女子では御座いません。幸村様を傷つけて、ごめんなさい」

「な、ならばなまえ殿の本当のお心は、誰を想われているのでござろう」

「私はどなたにも想いは寄せておりません」


そう口にするなまえの瞳は揺れていて、すぐに嘘であると気づいてしまい、しかし頬は変わらず涙で濡れていて、これ以上問う事など出来はしなかった。この俺を、この城の空気を見て、なまえが必死に考えた嘘なのだろう。それに比べて己の思いしか考えられぬ俺の小ささに耐えきれず、なんて大馬鹿者なのだろうと涙が溢れた。

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