みじかいはなし | ナノ



※現代パロ/元親の妹

□1
ドタドタドタと慌ただしい足音で兄が帰って来たのがすぐに分かった。普段は私が走ったりしたら怒るのに自分はこんなに煩くするなんてずるいと思う。まあ原因は私だから言い返しても私のせい、って丸く収められちゃうんだろうな。忙しく階段を駆け上がる音、もう少しで私の部屋まで着くだろう。さあどんな面白い顔を見せてくれるのかな?


「お、おい!どーゆう事だァ?!」

「ノックしてっていつも言ってるでしょ」

「玄関の靴は誰の!・・・なんでオメェがいんだ?」

「Ah?そりゃあloverだからな」


伊達先輩の言葉に案の定、兄はポカンとして動かなくなって思わず笑ってしまった。必死になっちゃって本当シスコンなんだから、でもそんなお兄ちゃんが好きだよ。なーんて言わないけどね、これ以上悪化されたらたまんないし。


「おにーちゃん?嘘だよー?伊達先輩お兄ちゃんに用があって来たんだってー、聞いてるー?」

「しかたねぇなhoney,イチャイチャしてよーぜ?」


その一言で兄は生き返ったらしく伊達先輩に物凄いガンを飛ばしていた。妹思いの兄は嬉しいですが、高校生にもなると少し重いです。




□2
父も母も遠い昔に他界して、それからは兄と2人暮らしの生活をしていた。兄は料理も運動も得意で、か弱い私としてはとても羨ましい反面、勉強ができない、いや大嫌いと言う難点がある。しかし学年が違うため私に教えることは出来ないし・・・。


「と、言うわけで。お兄ちゃんに勉強を教えてあげてもらえませんか?」

「何ゆえ我があの馬鹿に教えねばならんのだ」

「それは分かってるんですが、このままだと留年するかもしれなくて」


幼馴染でご近所さんの元就くんは名門高校に通っておられる凄い人で、兄とは同い年だ。昔は3人でよく遊んでいたのに大きくなるにつれて元就くんは勉強勉強で滅多に会う事さえなくなっていた。


「フン、断る」

「ぇえっ・・・元就くんの意地悪」


ふんっと背を向けて自宅に帰ろうと思えば肩をつかまれて強制的に動きを止められた。振り返れば私の頭をポンポンと数回軽く叩いて「大きくなったな」と一言。


「学校行事で明後日より1ヶ月フランスでな、すまぬ」

「そ、だったんだ。無理言ってごめんね?」

「それと久々に交わした会話があ奴の事でイラッとしたわ」


忘れていたけど、いつの日からか元就くんは兄の事が嫌いだったんだ。原因がなんだかは覚えてないけれど2人でいる時に兄の名前を出すと物凄い嫌な顔をして怒ってたな、なんて過去の事を思い出していた。




□3
家の掃除をしていたら昔の写真がわんさか出てきて、その中に混ざっていたのは兄が暴走族だった時の写真(と言っても2ヶ月ほど前の)。伊達先輩とは敵対してたらしいけど今は凄く仲良いし、そこ等辺のチンケな暴走族とは違って皆がみんな仲間思いで私も兄のバイクの後ろに乗せてもらった事もあったなー、まあ言ってしまえば緩かったんだと思う。


「おっ、懐かしいもん出してンなァ」

「このメンバーって今みんなどうしてるの?」

「あ?そりゃあ自由に生きてンだろーよ」


自由に、か。まあ心から悪い人なんてメンバーの中には居なかったしね、恐喝とか一方的な暴力は許さない人だし、そう言うのもあってみんな兄が大好きで本気で付いて行きたいと思ったんだろうなあ、って、なんか過信しすぎ!ブラコンみたいじゃないか。でも、そう言う点でも自慢の兄なんだよな。みんなに好かれて自分の道を通して、ああまた皆で釣りに行きたいなあ。


「よし!今度の日曜日みんなで釣り行こ?」

「そりゃ良い考えだ、久々にあいつ等にも会いてぇしなァ」


それから兄はすぐに携帯を取り出して昔のメンバーだった、今は“友達”に楽しそうな表情で電話をかけていた。活き活きしてる兄を見てるのが大好きだから、ずっと離れないで傍で笑っていて欲しいと思う私はブラコンなのかな?



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