いま思えば私は無理をしてる彼しか見た事がなかった。何故そこまで秀吉のために尽くせるのか私には分からないが、私も半兵衛のためなら死んでも良いと思えただろう
でも死んでしまったら何もできない、貴方は秀吉と新しい日の目を眺めるんでしょ?だったら死ぬなんて事、あってはいけないのに
「また・・・泣いて、いるのかい?」
「泣いてない、ただ寂しいだけ」
「どう、してだい・・・?」
「どうして?半兵衛もうすぐ死ぬじゃない」
今も無理して笑ってる、どうしてよ。死ぬ時くらい本音を言ってくれたって良いじゃない、私ってそんなに頼りないかな?それにまだ愛の言葉も貰ってない
閉じゆく瞼に涙ひとつ
愛してるのに届かない
ぼたぼたと滴る涙は半兵衛の美しい顔に落ちて半兵衛は嫌そうな顔をした。それから力の篭らない手で私の腕を掴んで私を宥める
「酷い顔、だね・・・」
「もう無理して笑わないでよ」
「・・・嫌だよ、」
君が見る僕の最後の顔が泣き顔だったら嫌だろう?そう言って段々に薄くなる目に、私は思いっきり笑顔を向けた。愛してる、誰よりも、だから笑ってさよならを言おう
最後に「愛、して・・・る」と優しい彼の声が聞こえた気がした