みじかいはなし | ナノ



隣の席の司馬君は今日も音楽を聞きながらボーっとしている。彼は一体何を考えているんだろうか・・・それとも本当にただボーっとしているだけ?

入学式の日からずーっと気になっていて、今回やっと隣の席になったのだから一度は話してみたいのだけれど、これは相当勇気がいると思う。だって、司馬君が喋ってる姿なんて一度も見た事が無いのだから
それでも勇気を持って隣を向いて、ふうっと息を吸い込んだ


「あ、あの・・・」


何とか搾り出した一言。これじゃあ音楽を聞いてる司馬君には聞こえないかもしれないと思ったが、どうやら聞こえていたようで顔を上げて司馬君は私の方を見た。

眼鏡で見えない瞳・・・たぶん目は合ってると思うのだけれど、目が見えないと相手が何を考えてるのか分かりにくい、それじゃなくても喋らない司馬君だ、分からない事だけで正直少し焦る


「えと・・・宜しくね?」


自分でも何ゆえしたのか分からない自己紹介、きっと焦りと緊張のせいだと思うけど。ペコリと頭を下げれば、司馬君もペコリと頭を下げてくれた。でも、彼は口を開かない。ただ少しだけ笑ってくれた気がした。嬉しいけど、やっぱり出来れば声を聞きたい


「せ、せっかく、隣の席になったから、司馬君のこと知りたいな・・・って、思って」


つっかえながらも出来る限り崩し言葉で言えば、司馬君はちゃんと私の方を向いて右手を出してきてくれた。これは握手の意だろうか?
何を考えてるのか謎だらけだが、とりあえず私も黙って右手を出せば優しく掴んでくれた。少しだけ胸が早く脈打つ、



触れた手は温かく



どこかで聞いた事がある、触れて好きだと感じる事があると。今の私の脈打つ音、それは錯覚かもしれないし、異性に慣れないせいかもしれない。けれど、少しだけ、本の少し、ずっと気になっていた司馬君に恋してみたくなった


「司馬君・・・野球楽しい?」


私のそんな質問に司馬君はコクリと首を縦に振って頷いた。そんな姿が可愛くて


「こ、今度、練習見に行っても、平気、かな?」


そう問えば、一瞬だけ驚いてすぐにニコリと笑顔を浮かべる。きっと今の私の顔は誰が見ても分かるくらい真っ赤になっている気がする



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