※シロ夢
※シロさんの娘さん設定




物心がついた頃には、すでに
白髪があった。

同じく若白髪だったらしい、ママの遺伝と、
まさに現代っ子の私らしい、ストレスが原因。

私のせいで、ごめんね。と謝ったママを恨んだことは、
一度も無い。と言ったら嘘になる。

小学校なのに白髪が生えている。
これは実に良い虐めの的だった。

それでも、学校は好きだった。と言ったら嘘になる。

でも、ママを恨んだのも、学校が嫌いだったのも、
思春期を迎えたばかりの、ほんの一時期だった。


好きなタレントが出ている雑誌をいつものように立ち読みしていたら、
さも正論のように、こんなことをほざいていた。

「僕は白髪にしろ若白髪にしろ、すごくかっこいいと思うんです。だって、それはその人が苦労してきた証ですから」云々。


一瞬でそのタレントが嫌いになった。

何を思って、そんなことが言えるの?
あなたは、私の苦労を、どれくらい知っているの?
若白髪で悩んで、また白髪が増える。
この悪循環の苦しみが、あなたには分かるの?

なにが、かっこいいのよ!

それなら、私の白髪、全部あなたにあげるわよ

…あまりにそのタレントが憎らしくなって、気づいたら、その雑誌をぐしゃぐしゃに握りこんでいた。
すっかり買う気も無くなったのに、店員に無理矢理買わされた。
(帰ってすぐ捨てた)





そんないろんな過去があったけど、
高校生になった今も、私の髪はまだ白髪混じりだ。

黒染することも、派手な色にすることも無い


それは、苦しい過去に紛れて、
こんな暖かい過去があるからだ。





『おかえり…おや、なんだい、そのぐしゃぐしゃの雑誌』

『…本屋さんで、破いちゃったから』

『ハハ、仕方ないなあ…』

『……』

『おや、また、白髪が増えたね?』

『……うん』

『伶奈は繊細な子だからなあ…』

『……』

『ん、実に素敵な白だな』

『………へ』

『伶奈の白髪は、くすんでなくて、純粋な白だ。キラキラしている。』

『……』

『伶奈がおばあちゃんになったときは、すごく綺麗な髪なんだろうな。
その頃は俺はもう死んでるだろうから、
その姿を見れないのが残念だ』

『…ほんとう?』

『ああ、本当だ。伶奈はもっと、自分に自信を持ちなさい』


…やさしい、あたたかい、えがおだった。




……たった、それだけだった。
私には、それだけで十分だった。

そりゃあ、普通の人や、
それこそ嫌いになったタレントにそんなこと言われたら、
私は悔しさとショックで立ち直れないだろう。

…でも、それを言ってくれたのが、
パパだったから。

パパは、慰めのつもりで言ったんじゃない。
全部、パパの本音だった。

パパは私の白髪が本気で好きだし、
私の頭が全部真っ白になった、と手紙でも送れば、
今すぐ私の為に北海道まで白線を引いて、
私の頭を拝みに来てくれるだろう。
(そしてこう言うんだ、「なんて素敵な白なんだ」)

その自信があるんだ、私には。

パパが、私のことを娘と思っているのか、
大事な白色の対象と思っているのかは知らないし、

別にどっちだっていい。



…だから、私は、自分の白髪を受けとめられる。





朝。
軽く身支度を済ませ、玄関に向かう

「ママ、行ってくるね!」

「ええ、気をつけて」

ママは、自分の素敵だった白髪を、「老いが3割増す」とのことで、
茶髪に染めてしまった。
それも綺麗だからいいけれど。

それに、私がいるから。

「ママ」

おもむろにママに話しかける。

「なーに?」

「私、自分の髪の毛、大好きだよ」

「…えっ」

「ママに似てよかった。えへへ、行ってきます!」


玄関に置いてある、家族写真のパパにも挨拶する。

「パパ、行ってきます」



行き道で友人に会った

「おはよう!今日も寒いね〜」

「おはよ、そうだね、寒いねえ」

「…また白髪増えた?」

「増えた増えた」

「なーにをそんなにストレスに感じてるんだろうねえ」

「もうストレスなんか無いよ、ただの髪の寿命」

「ははっ、アンタらしい。卒業しても、髪染めないの?」

「んー、今んとこその予定は無い、かな」

「あんたのことだから、お父さん喜ばす為に、
いっそのこと、全部真っ白に脱色するのかと思ってた(笑)」

「そこまでしないよ!
パパが生きてるうちに自分の力で頭真っ白にして、
喜ばしてあげるんだー」

「…ああ、そっちね」





ものは考え様。
私のこの目立つ頭も、

立派な私のアイデンティティー。











………………・

あとがき長いですww

私も昔は若白髪で悩んでいました。
小学生の頃からです。
何回も黒染したこともあります。

今はほったらかし(笑)
白髪があるとどうしても暗い印象を持たれていたんですが、
ちゃんとストパーあてて、
手入れもちゃんとしてたら、
暗い印象なんて持たれないんです。

悩みの量に白髪の量が比例して、
そりゃ悩みまくってるときは白髪を見るだけで辛いですが、
減ってゆく様は案外面白いものです(笑)

実際、雑誌で、白髪は苦労してる証拠だ
なんて言ったタレントさんがいたんです。
本当に好きなタレントさんでしたけど、
少し軽蔑しました。
別に腹は立ちませんでしたけど、
何でそんなことを言うんだろうと思いました。
実際に自分に白髪ができたら、
絶対すぐ染めるんだろうなと思う人というか、
そういう部類のタレントさんでしたので。

逆に、好きなアーティストが
こんなことを言っていました。
「そういえばこの前、白髪が生えてきた。
一気にまとまって5本くらい生えてきて、
驚いたけど、ナチュラルメッシュ(笑)みたいで
かっこよかったから、放ってたら、
勝手に消えた」

私はちょうど、この頃から白髪染をやめました。
度合は随分私の方がひどいけど、
私も、ナチュラルメッシュ(笑)って
思うようにしようと。

他の方ほどうかわかりませんが、
私は、苦労していることを
褒められたり心配されたりするよりずっと、
白髪の自分としての見た目を
否定されないことの方がずっとずっと
嬉しいのです。

それに近い、シロさんの夢でした。

なんか似たような話、原作でやってましたけど…←


私の美容院を探す基準は、
「白髪を否定しないor白髪について触れてこない」
です(笑)

 


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