※魔王JR、蝉夢
何年も前のこと。
何年も何年も、何年も前、大昔の、
俺がまだ殺し屋をやり始めた頃の、
………怪我なんか、をやってて、病院に通いづめていた、
何年も前の大昔の話。
…あ、つっても通いづめるって程病院行ってねぇから。ほんの1週間程度だから。
この俺が病院に通いづめるなんて、
「わかった、わかった。早く話の続き、教えて?」
小さな愛を見たんだ。
青いバンダナを頭に巻いた男がいた。
多分、俺より5歳くらい年上なだけの若い男。
こんな時代にバンダナなんてダサいのつけるなんて、おかしなやつだろう?
そいつ、多分なんかの薬の副作用で髪の毛が全部抜けてんだよ。バンダナから一本も毛が見えてなかったから。
まあそこまでは、病院に行けばたまに見れるような光景だ。
俺が「それ」を見たのは、その直後。
お揃いの、青いバンダナを巻いた女が出て来たんだ。
その女は、バンダナから長い髪が垂れていた。
それでいて、その男に近寄り、幸せそうに微笑んだんだ。
つまり、アレだな。
まぁ場所が病院なら、病気の男に合わせて女もバンダナ巻いてるってすぐ気付くけど、
普通に街中なら、ただのオソロイのバンダナ巻いてるイタイカップルにしか見えないっつー訳だ。
なんか、すげくね?
男のために、女までが冷ややかな目で見られるのに、その女は幸せそうに笑うんだぜ?
運命共同体ってやつ?
やっぱり、これが「愛」の力なんかなー
「……つまり、何が言いたいの?」
え?あぁ、そりゃあ、お前………
お前とも、(そんくらいの愛が育めたらなって!!)
そう言って彼は、幸せそうに笑った。(そして私も、幸せそうに笑うんだ)
…………………・
実話です。
病院でこんなカップルを見たんです。
まあ真相は知りませんが、私には素晴らしき愛に見えたという話。