※ヒューズ中佐 追棹
私に未来が予測できたなら、
もっと、あなたに素直になれたのかもね?
*
「伶奈、俺は一生ロイの下について助力することに決めてるんだ」
ある日突然、ヒューズ中佐はニコニコとしながらそんなことを告げてきた。
「…仲いいんですね。まるで結婚するかのような」
「なーに言ってんの!1番はグレイシアとエリシアだっての!んでお前は2番目な。ロイは3番目だ」
「ロイ大佐の順位ひくくないですか」
「しゃーねーだろ?お前がいるんだからよぉ」
「普通は、部下より上司でしょ」
「残念ながら、俺は普通じゃないんでねぇ!あっはっは」
「ちなみに、私の中のヒューズ中佐の優先順位は、小佐の次の次の次くらいですけどね」
「はっはっはっ!小佐より下か!まいったなあ〜!」
いつも、いつもヒューズ中佐はそんな下らないことばかり言って、一人で笑っていた。
仕事しろよ
私はヒューズ中佐の分も、書類整理をたくさんやった。
どうやってあの人を潰そうかとも、何回も悩んだ。
でも、それでも、私達のことをどれだけ大切に思っているか、
それだけは毎日、ひしひしと感じていたんだ。
奥さんと娘さんの自慢話をしているときのヒューズ中佐は、そりゃあムカつく顔だったけど、それでも、とても素敵な笑顔だった。
「伶奈…俺には妻と娘がいるんだ…………すまん」
「なんの話ですか」
「つーことで、お前は愛人な!」
「愛妻家のくせに浮気するんだ」
あれが、冗談だったのか本気だったのかは、最後まで分からなかった(きっと冗談だろう)が、少なからず私の心臓が跳ね上がっていたのは確かだ。
「伶奈、俺は一生ロイの下について助力することに決めてるんだ」
「前にも聞きましたけどそれ。」
「お前は、どうする?」
「……はい?」
「お前は……」
あのときのヒューズ中佐は、いつになく真剣で、不安げな表情だった。
「…私は…ヒューズ中佐への助力を一生させて頂きます。微力ながらですが。」
あの時初めて、素直になれた気がした。
「………そっか!」
急にニコニコと笑顔に戻ったヒューズ中佐を見て、私は、幸せ者なんだろうなあこの人は、と何となく思った。
「伶奈がそんなこと言ってくれるなんてなあ!嬉しいぞ!ははは!」
「なにがそんなにおかしいんですか」
「いーや、なんか、な!ははは!愛してるぞ伶奈!」
「……ばーか」
私は、あなたのその、うさん臭い愛の言葉が
大好きでした
*
「………はーあ。私はこれから、一体誰に助力すればいいんだろう」
ヒューズ中佐に一生助力するからって、別にあなたが死んでも私は追いかけないですよ?
ヒューズ中佐が死んだとき、涙は出てこなかった。
写真で何回も見たエリシアちゃんが大声をあげて泣いていて、
小佐も泣いていて
みんな、泣いていて。
どれだけ、この人が幸せ者か、改めて実感した。
まだ現実を受け入れきれていない、と、自分で思った。
頭で分かっていても、心がそれを拒否していた。
ヒューズ中佐のことだから、仕事場に帰ったら、また写真を眺めてデレデレしているじゃないかって思うから。
もし本当にそうなら、泣いたら私も皆も、馬鹿みたいじゃん。
*
仕事場に戻ったとき、やっぱりヒューズ中佐はいなかった。
死んだ?ううん違う、きっと、エドワード君のお見舞いだ。
死んでない、死んでない……
…自分でも馬鹿だと思う。
死んだんだ、ヒューズ中佐は。
分かってる、分かってるのに。
「…………、」
1枚の写真が目に入った。
ヒューズファミリーの写真だ。
確か、持ち歩く用と、自宅用と仕事場用に写真があるとか以前言っていた。
馬鹿だなあの人も。
何となく、ヒューズ中佐の顔は今見たくなかったので写真を裏向きに置いた。
「あ、」
写真の裏に、文字が書いてあった。
「“愛してる、家族と、お前を”」
(そのとき初めて、私は泣いた)
…………………・
あとがき
ヒューズ中佐追棹夢でした
もっとこう、感動できるやつが書きたい。
なにこのきもい文章体エックス
ご冥福をお祈りいたします