※ヒューズ中佐 追棹






私に未来が予測できたなら、

もっと、あなたに素直になれたのかもね?







「伶奈、俺は一生ロイの下について助力することに決めてるんだ」

ある日突然、ヒューズ中佐はニコニコとしながらそんなことを告げてきた。

「…仲いいんですね。まるで結婚するかのような」

「なーに言ってんの!1番はグレイシアとエリシアだっての!んでお前は2番目な。ロイは3番目だ」

「ロイ大佐の順位ひくくないですか」

「しゃーねーだろ?お前がいるんだからよぉ」

「普通は、部下より上司でしょ」

「残念ながら、俺は普通じゃないんでねぇ!あっはっは」

「ちなみに、私の中のヒューズ中佐の優先順位は、小佐の次の次の次くらいですけどね」

「はっはっはっ!小佐より下か!まいったなあ〜!」

いつも、いつもヒューズ中佐はそんな下らないことばかり言って、一人で笑っていた。

仕事しろよ

私はヒューズ中佐の分も、書類整理をたくさんやった。

どうやってあの人を潰そうかとも、何回も悩んだ。

でも、それでも、私達のことをどれだけ大切に思っているか、
それだけは毎日、ひしひしと感じていたんだ。

奥さんと娘さんの自慢話をしているときのヒューズ中佐は、そりゃあムカつく顔だったけど、それでも、とても素敵な笑顔だった。


「伶奈…俺には妻と娘がいるんだ…………すまん」

「なんの話ですか」

「つーことで、お前は愛人な!」

「愛妻家のくせに浮気するんだ」



あれが、冗談だったのか本気だったのかは、最後まで分からなかった(きっと冗談だろう)が、少なからず私の心臓が跳ね上がっていたのは確かだ。



「伶奈、俺は一生ロイの下について助力することに決めてるんだ」

「前にも聞きましたけどそれ。」

「お前は、どうする?」

「……はい?」

「お前は……」

あのときのヒューズ中佐は、いつになく真剣で、不安げな表情だった。


「…私は…ヒューズ中佐への助力を一生させて頂きます。微力ながらですが。」


あの時初めて、素直になれた気がした。


「………そっか!」


急にニコニコと笑顔に戻ったヒューズ中佐を見て、私は、幸せ者なんだろうなあこの人は、と何となく思った。



「伶奈がそんなこと言ってくれるなんてなあ!嬉しいぞ!ははは!」

「なにがそんなにおかしいんですか」

「いーや、なんか、な!ははは!愛してるぞ伶奈!」

「……ばーか」




私は、あなたのその、うさん臭い愛の言葉が
大好きでした








「………はーあ。私はこれから、一体誰に助力すればいいんだろう」


ヒューズ中佐に一生助力するからって、別にあなたが死んでも私は追いかけないですよ?


ヒューズ中佐が死んだとき、涙は出てこなかった。

写真で何回も見たエリシアちゃんが大声をあげて泣いていて、
小佐も泣いていて
みんな、泣いていて。


どれだけ、この人が幸せ者か、改めて実感した。


まだ現実を受け入れきれていない、と、自分で思った。

頭で分かっていても、心がそれを拒否していた。


ヒューズ中佐のことだから、仕事場に帰ったら、また写真を眺めてデレデレしているじゃないかって思うから。


もし本当にそうなら、泣いたら私も皆も、馬鹿みたいじゃん。






仕事場に戻ったとき、やっぱりヒューズ中佐はいなかった。


死んだ?ううん違う、きっと、エドワード君のお見舞いだ。

死んでない、死んでない……


…自分でも馬鹿だと思う。
死んだんだ、ヒューズ中佐は。

分かってる、分かってるのに。


「…………、」


1枚の写真が目に入った。


ヒューズファミリーの写真だ。


確か、持ち歩く用と、自宅用と仕事場用に写真があるとか以前言っていた。

馬鹿だなあの人も。


何となく、ヒューズ中佐の顔は今見たくなかったので写真を裏向きに置いた。


「あ、」

写真の裏に、文字が書いてあった。











「“愛してる、家族と、お前を”」
(そのとき初めて、私は泣いた)








…………………・
あとがき
ヒューズ中佐追棹夢でした

もっとこう、感動できるやつが書きたい。

なにこのきもい文章体エックス

ご冥福をお祈りいたします



 


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