※井浦夢




あの人は、いつもいつも、真ん中にいる

明るい、明るいなあ

緑色だけど、太陽みたいだなあ

いっつも、笑ってるなあ

素敵だなあ

素敵だなあ……




某CDショップ内にて。


「…あ!本城さんだ!!井浦だよ!」

「知ってる…こんばんは」

「やっほー!こんなとこで会うなんて意外だなあ!音楽、よく聴くの?」

あれ…立ち話、しちゃう感じなのかな?
暇だから、いいけど…

「そうだね…わりと、聴くよ」

「そーなんだー!何々?なんかCD買いに来たの?」

「いや、今日は予約しにきたの。ついでに見てただけ」

「へえ!なんのCD予約したの?」

「えと…9mm」

「えーっ!!9mm聴くの!?すっげー意外!!俺も9mmすき!!」

「あ、そうなんだ。9mmすきな人、初めて見つけたよ」

「俺も!以外とうちの学校、いないんだよ!ねーっ、その予約した9mmのCD、また今度貸してくんないっ?」

「えっ」

「お願いっ!井浦、今月は他のCD買っちゃってお金無い!」

「…い、いいよ。また今度、持ってくるね。」

「やった!ありがとう!」

「うん。何のCD買ったの?」

「えー…多分知らないよ?HUNGRY DAYSって、もう解散しちゃったバンドのアルバム」

「あ…知ってる。私、そのバンドすき。ライブも行ったことあったよ」

「え、まじで!?すげー!俺さー、解散してからそのバンド知ったからさー!ライブ行きたかったなあー!!…あ、じゃあもしかして、HUNGRY DAYSのCD全部揃ってたり…?」

「うん。全部揃ってるよ」

「あああああ!なんだよ、それならCD買うんじゃなかった!本城さんに借りればよかったー!!」

コロコロ表情変わるなあ

基本大声だけど。

店員さん、うるさいなあって睨んでるよ。

明るいなあ、井浦くん

夜なのに、昼間みたいだなあ

誰かとCD貸す約束なんて、したの初めてだなあ

しかも、相手が井浦くんだよ?

嬉しいなあー


「…んっ、あれ、もしかして本城さん、一人で来た?」

「あ、うん。」

「危ないっしょ!井浦が送ったげる!!」

「え!い、いいよそんな…!」

「気にすんなって!基子ー!!兄は友人といるから先帰れ!」

井浦くんが空中に向かって叫ぶ

「店内で大声出すな馬鹿お兄ちゃん!!」

どこからともなく大声が返ってきた。

「ちょ、妹さん一人でお家に帰らせる方がダメなんじゃ…!」

「ん?いいのいいの!あいつブスだから!さあ井浦と帰ろう!」

「えぇー…」



そんな訳で帰り道。

いいのかな、いいのかな

私、友達いないから、こういうこと、してもらったことないから


どういう反応すればいいか、分かんないよ


「や、優しいね、井浦くん」

「え?」

「ほ、ほら井浦くんっていっつも皆の輪の中心にいるじゃない?なんでそんなすごいことできるんだろうって思ってたんだけど、優しいからなのかなあ」

「や…いつもいつも中心にいるわけではないさ…別に優しくないし…ていうか、大抵、中心に井浦はいないよ?」

「そうなの?」

「そうなの。皆、井浦の扱いひどいの。軽く傷つく。」

「そうなんだ…」

私、友達いないから、そういうの分からないな

「そうなんだよ。前だって、吉川さん、他の人には義理チョコあげてて、俺にはくれないんだもん。」

「あらら…」

「井浦に愛をー」

「あはは」

((あ))

「(初めて笑うとこ見た)」

「(久々に笑った…)」



楽しい帰り道はあっという間に終わり、家の前に着いた。


「ごめんね…井浦くん」

「ん、何が?」

「いや…特に友達って訳でも無いのに、家まで付いてきてもらっちゃって……」

「……」

「…?」

突然の無言が気になって、ふと井浦くんを見上げれば、

井浦くんは、私を見下げて、ポカーンと口を開けていた。

「い…井浦くん…?」

「友達じゃないの?」

「え?」

「俺達、友達じゃないの?」

「あ…」

「本城さん、今まで一回も話したこと無かったけど、何気に3年間同じクラスだったよね」

「え…うん」

「俺、クラスが同じになった人は皆友達のつもりだったんだけど…」

あぁ…井浦くんがしょんぼりしてる

なんだっけこれ…『かなしうら』だっけ…それともストレートな『しょんぼりうら』だっけ…

どうでもいいことが頭をよぎった。

「しかも3年間同じクラスでしょ?俺的には親友レベルだったんだけど」

「そ…そうなの?」

それはそれで困る……

「そうなの。」

「…。……じゃ、じゃあ、と、友達!親友レベルになれるように、頑張ってみる…!」

「え、まじ?分かった!!じゃあ明日から本城さんも一緒にお昼食べようね!」

……。

「………えっ!!?そ、それって堀さんとかとも…!?」

「そうそう!生徒会室で!あと石川とか、宮村とか!」

「…(男子ばっか…!!)」

「じゃー井浦は帰ります!おやすみなさい!また明日!」

「おやすみなさい…また明日…」

友達が出来た

それだけで、幸せなことじゃない

だから、その幸せをバネにして、明日、更なる幸せを掴もうじゃない

うん…

「本城さん」

「ぅえっ!?な、何だ井浦くんか……!ど、どうしたの?」

「(今すごい声出たな)いや…、聞き忘れたことがあって」

「…?」

井浦くん…真面目な顔だ

「無理させた?」

「…?な、何が?」

真面目顔だ、井浦くん、真面目顔

「や…うるさいの、嫌いな人もいるし、俺、ガンガン話かけちゃって、勝手に家まで送っちゃって…」

「………」

あ、頭ボリボリしてる
反省しちゃってんのかなあ

「……迷惑だった?」

「嬉しかったよ」

「………」

「ありがとう。」

今は友達のままだけど。
いや、これから先も、私が望む、彼氏彼女の関係になんてなれないだろうけど。

嫌だったら、親友レベルになるなんて、言わないよ?

「…うるさいうらはお嫌いですか」

「え?」

「嫌だったら、うるさいうらは封印する。静かうらになる」

「………」

…そんな大事なこと、私に任せていいの?

「うるさいうらはお嫌いですか」

「大好きだよ」

「!」

「うるさいうらも、静かうらも、大好き」

「…やった、ありがとーう!」

何故か、ガッシリと、握手をした。

「井浦も本城さん大好きです!」




おわり。


…………………・

9mmもHUNGRY DAYSも、すきバンドです

HEROさん著の堀宮 より、井浦夢でした
浅倉の浅尾みたいなヒロインになってしまったな
最後のヒロインの「大好き」は、井浦のこと好きなくせに、愛とか恋は関係なく、素で好きって言っちゃったかんじ
そして井浦は、ヒロインの告白をマジで受け取っちゃった上での「大好き」なのか、親友としての「大好き」なのか…
その辺りは、ご自由に考えてください私も分かりません

あと基子ちゃん一人で帰らせちゃってごめん


 


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