橘×赤也
不動峰中学校、卒業式。
仲間ともそこそこに別れ、
校門に向かうと、
東京都ではまず見ないはずの制服を見つけた。
「……切原」
声をかけると、まるで俺のことを待ってました、と言わんばかりに、
こちらに走ってきた。
「橘さんっ」
「どうしたんだ今日は、わざわざ不動峰中まで来て」
「やだな、理由が無いと来ちゃいけないんスか?」
「理由も無いのに、来たのか?」
「いやいや…まあいいや、橘さん、卒業おめでとうございます」
「…あぁ、ありがとう。立海の卒業式はもう終わったのか」
「えぇ、昨日。部長達、立派でしたよ」
「俺だって立派だったさ」
「でしょうね。想像つきますよ」
「そうか、」
軽い見栄を張ると、
普通に肯定された。
「…俺も、簡単に想像がつくな」
「?」
「昨日、むっちゃ泣いただろ、お前」
「!、なんで」
「ハハ、すぐ分かったよ」
悪魔化もしてないのに、真っ赤に充血した目が物語っている。
「目薬ちゃんとさせよお前」
「〜っ、だから、アンタのとこに来たんじゃないスかっ」
「あぁ、それも分かる。」
バツが悪そうに顔を赤くして声をあげる切原を見て、
思わず微笑んだ。
…寂しいんだよな、お前。
お前は、仲間が全員卒業して、一人ぼっちになった。
…俺もだよ。
仲間より早く卒業しちまって、
一人ぼっちになったんだ。
道に一人、残されたお前と
道を一人、先行く俺。
「正反対のようで、実は一番似てるんだよな」
ワカメ頭に絡まった桜の花びらを取ってやる。
「…へへ、アンタなら、そう言ってくれると思ったっス」
俺もそう思ったから、ここに来たんスよ
そうして彼は、
一人ぼっちになったばかりの俺に
人懐っこい笑みを浮かべた。
ああ、忘れていた、
俺は一人ぼっちでは無かったな、
と実感した。
…………………・
一人じゃないよ。
無邪気な笑顔に実感させられます。