なんで俺は今、この人の腕の中にいるんだろう。

「ちょ、…おき、た隊長、」

「…」

あぁ、そうだ。
浪士の張り込みをしていて、
相手に気付かれかけた時、
相手は帯刀しており、
そしてこちらは帯刀を忘れていたことに気付き、
わずかながら死を覚悟していたんだ。

そして、後ろから突然手を引かれたかと思うと、
彼の腕の中にいたのだ。

少し、体が震えていたのが自分でも分かった。
でも、この人のおかげで、
幸い気付かれずに済んだようだ。

「あの、ありがとうございます…
もう、大丈夫ですから」

「あー…いいから、じっとしてろィ」

「えー…」

もう、浪士の姿も見当たらないし、
改めて尾行を続けたいんだけど。

沖田隊長の抱きしめる力の強さもなかなかのもんで、
身動きも取れない。
(そして、振りほどこうとするのを諦めた)

「もー、沖田…さん。」

名前を呼ぶと、パッとこちらを見つめてきた。
至近距離で見つめられる。

戸惑い、恥ずかしく感じ、
目線から逃げるように
沖田さんの肩に顔を埋める。

すると、沖田さんの視界に僕の耳が入ったようで、
「ふっ」
と息を吹きかけられた

「っ?!」

突然すぎるできごとに声がつまる。

「抱き心地が良いねェ。」

「な、に、言ってんす、か…ふぁっ」

耳元で囁かれ、変わらず息を吹きかけられる。

くすぐったさとはまた違った感覚に、
言い返そうものなら、高い声が漏れてしまう。

「…っ、はぁっ、やめ、て」

「やめねぇよ…」

そんな。俺の荒い吐息に呼応するように、
沖田さんの息遣いも荒くなった。

「反応がウブだねィ。かわい…ザキぃ、
お前まさか、どうて」
「違いますよ!!!
童貞なわけないじゃないですか!!」
「まだ最後まで言ってないのに」

思わず顔をあげて盛大に言い返した。

あ。

また、至近距離に沖田さんの顔。

「でも、彼女はいねぇよなァ?
好きなやつでもいるのかよ」

「…そりゃ…」
「マジでか。誰?誰?」

え、こんな至近距離で恋バナ始める?

「え、言うんですか、今」
「教えてくれよ、誰にも言わねェから、ねっ」

何この、修学旅行の雰囲気。
それなら、言ってやれ。

「…沖田さん、」

「うん?」

「…いやだから、沖田さん、ですよ。好きな人」

2秒程の沈黙が、永遠に感じた。

「は、はぁ!!?」

目を見開き、口を大きくあけて、
心底驚いた様子の至近距離の人。
ここまでのイタズラ(?)しといて、
なんでそこまで驚くんだよ。

「そういうことなので、…あの、とりあえず」



張り込み続けて良いですか



驚いた隙を見計らい、
腕をほどいてその場を去った。
変わらず驚いた表情で固まっている
沖田さん(あんな顔見たことない)に
背を向けて歩きだした。

(この心臓の音を聞かれないように)
(この顔を見られないように)






………
こんな夢を見たので、書きました。
実際はもっと短く、そして訳分からん夢でした。
舞台は地上ではなく、空でした。
風船持った沖田さんと、
それにしがみつく山崎さんでした。
訳分からん

 


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