騒がしい一日が終わった。

ピンポーン

「Trick or Treat」

否、まだ終わっていなかった。

「……今日はその日じゃありませんよ」

「プリッ」

仁王くんがなぜか家に来た。

「こんな遅くに何の用ですか」と問うと、「恋人がバレンタインを一緒に過ごすのは当たり前じゃろ」と簡単に返された。

そして言い終わるが早いか走りだすのが早いかくらいの差で仁王くんは私の部屋へと走りだす。

「ちょっ、仁王くんっ!」

私が自分の部屋へと着いた頃には、仁王くんは私の部屋に置いた紙袋を漁っていた。

今日頂いた、チョコレートの数々だ。

なんの了解も得ずに、仁王くんはそれを食べる。

「…チョコレートなら、あなたも沢山頂いたでしょう?」

「…………」

「…それにあなた、甘いもの苦手ではありませんでしたか?」

「……………」

「……嫉妬するなら私にも、あなたが今日頂いたチョコレート、下さいよ」

「……ピヨッ」

目も合わせずにお互いに笑うと、そこからは、干渉することをやめ、私は机に向かった。

「すみませんが予習中なんです。好きに召し上がってください」

「ええんか?」

いいも何も、自分が勝手に食べている癖に。

「構いませんよ。頂いた方には申し訳なくは思いますが、正直本命でもない方から頂いても、ね」

「…この腹黒紳士」

仁王くんはそう言うと物色を再開した。



どれくらいの時間が経っただろうか。
私が仁王くんを振り返ったのは、仁王くんのひどく咳き込む声が聞こえたからだ。

「大丈夫ですか?」

「このチョコ」

「え?」

「タバスコ入っとる」

一見普通のチョコレート。

しかし仁王くんはそれを食べて真っ赤な顔をして咳き込んでいた。

…だけど。

「……仁王くん、嘘はいけませんよ」

「…柳生にはもう通用せんのか」

「残念でしたね」

「ピヨッ」

どうやら仁王くんは、私に構って欲しくて嘘をついたらしい。
私が再び机に戻ろうと背を向けると、「やあああああぎゅ」と嫌に間延びした声で呼んできた。

「なんですか?」

「キスしよ」

「…はい?」

唐突すぎる話題に、若干戸惑う。

「チョコレート食べながらキスして、2人で溶かしあったらな、媚薬効果があるんやと」

「…………それは興味深い」

「こっち来んしゃい柳生」


それだけはわざわざ持参したのだろう、板チョコの破片を口にくわえ、仁王くんは私を待ち構えた。

「…あなたもしかして、これが目的で私の家に来たんですか?」

「何のことやら。」

知らんふりをする仁王くんに若干呆れながらも、私は結局、仁王くんの腕の中へと歩み始めるのだった。





おわり



………………・
チョコが媚薬効果…だと…!?
噂です。人から聞いた話なんで真実は知りません。

なんかとんでもない展開の早さで申し訳ない。私が一番びっくりしてます

いつも腐小説を書くとき、タイトルでどっちを右にするべきか迷います。
誘い受けもありだなhshs!みたいな…ね←

ハッピーバレンタイン!
世界中のリア充に幸あれ!


 


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