のっとbl

※幸村死ネタ
※死後のはなし




真田視点


赤也の成人式を終えた今日。

俺達、元立海テニス部レギュラー3年も、赤也に合わせスーツを着て、ある場所に向かった。

「赤也も、とうとう成人したぞ…」

景色の良い墓園。

「部長、キレイな花見つけたんで、ここ置いときますね」

赤也が花を供える。


…幸村は、ずっとここで眠っている。

部長のまま死んでしまった幸村は、赤也にとっては、たとえ自分が成人しても、未だに部長という存在だ。

「(どうだ、幸村。成人した俺達は)」

サマになっているだろう?

風の音がする。

『うん、皆、なかなかカッコいいじゃない』

「…………?」

幸村?

『赤也、すっかり大人びたね。スーツがこんなに似合うなんて考えてなかった』

「………」

そうだろう?似合っているだろう。なぜだか、俺が嬉しく思ってしまう程だからな。

『ただ、真田のスーツ姿は……。…ふふっ、やっぱりいいや』

「………。」

何が言いたい!

勢いよく振り返ると、そこには驚いた表情のジャッカルしかいなかった。

「な、なんだよ…真田」

「…いや。なんでもない。…赤也」

「はい?」

「幸村が、お前のスーツ姿がよく似合っている、と言っていた」

「…。…ッス」


そろそろ真田んちで酒パするかいのー。

仁王の、変わらない間延びした声が聞こえたのをきっかけに、

俺達は墓石に最後の黙祷をすると、その場を去った。





仁王視点

「っはー!酒うまいっすね!」

「あまり飲み過ぎるなよ」

「はいッスー!」

「(もう完全に出来上がってしもうとるの。)」

わしがビール缶ひとつをちびちびと飲んどる間に、
赤也はもう2本目じゃ。

「しかし、2本目でそんな赤うなってもうて。赤也はもうちっと酒に強くならないとじゃな」

「1本飲み干せないお前が言うな!」

「えーブンちゃんひどい」

「っていうか俺まだ酔ってませんよ!」

「はいはい。」

火照った顔をして否定する赤也を尻目に、わしは、新しいビール缶とグラスを持って、幸村の写真を置いてある場所に移動した。

「…のう、幸村。幸村もなあ、ほんまはもう21じゃけぇ、たーんと飲みなっせ」

グラスに並々と麒麟ビールを注ぎ、CMばりにうまそうになったそれを供えた。

中学卒業間際にこの世を旅立った、幸村の最後の写真。

わしがふざけて真田のソロ写真を撮りまくってたら、「ちょっと、俺も撮ってよ」と無理矢理撮らされた。
嫌がってる奴を撮るのがおもろいのに、幸村は嬉しそーにピースし、女の子みたいに笑っちょる。
たまったもんやなかった。

まあ、入院しちょった頃は写真大嫌いじゃったから、その頃よりはましかの、なんて考えてたのに。


「……。…おー、幸村見てみ、この泡。お前さんの頭に巻いちょったアレにくりそつじゃ。見事じゃろ」

泡が少しずつ、シュワシュワと音を立てて消えてゆく。

シュワシュワ。

シュワシュワ…。

『ビールもいいけどさ、俺、ワイン飲みたいんだけど。』

「っ!…。…はは、贅沢言うなや……」

思わず笑ってしまう。
そんな下らないことの為に、化けて出てくるなんて。

『赤ワイン。赤ワインがいいよ仁王。俺は赤ワインを浴びるように飲むんだよ』

「知らん。ほれ麒麟ビールじゃ」

『やーだー。赤ワインー。買いに行けーっ。』

とうとうゴネをこねだしたその半透明な奴を見て、
諦めたわしは溜め息をつきながら立ち上がった。

「はーっ。しゃーないの…。」

『!やった』

俺は立ち上がると、玄関へ向かう。

「どこへ行くんです仁王君?」

「そこのスーパー。幸村が、麒麟ビールよりワンカップがええって言うもんやから」

『!ワンカップ!?ちょ、違う違う!違うよ』

「幸村はワンカップを浴びるように飲むんやてー。」

『違うってお前絶対ワザとだろ赤ワインって言ってんだろうが!』


ふん。わしにまともなお使いは求めんことじゃな。
ふははははは!

幸村にしか聞こえないくらいの声で、真田ばりに笑っていたのに、

「幸村はワンカップより赤ワインの方が飲みたいんじゃないか?」

なんて、冷静極まった柳の声が聞こえ、

わしは仕方なくまともな買い物をするハメになった。

相変わらず半透明な奴は柳の後ろに移動し、見事なドヤ顔をかましてきた。

「……ふんっ!」

(いっそのこと、高価な赤ワインと高価なグラス買って帰ってやろう。)

皆も幸村も、おったまげるじゃろうて。


こうやってまた、新たな手の込んだイタズラを思い付いたもんだから、

結局俺はニヤニヤしながら、冬の神奈川を一人で歩いた。

「うーっ、さぶ。」

ぴゅう、と冷たい風が頬を掠める。

(幸村は、こんな冬の寒さにやられたんやろうなあ。)

早く幸村のびっくりした顔が見たくて
足を早めて真田の家に帰ったのに、

幸村はすっかり気配を消してしまっていて。
残念ながらおったまげてくれたのは、
唯一酔いつぶれてなかったジャッカルだけやった。


「なんだよ畜生!!」
「おお仁王が標準語でキレてる」




柳視点


「……ふんっ!」

仁王が若干拗ねて真田の出ていった後、俺の肩に手が置かれた。

『…ありがとう、蓮二。良く知ってたね、俺が赤ワイン飲みたいって』

「…フッ。お前が入院したばかりの頃に、2人で成人した後の夢を語り合っただろう。その時に言っていたのをたまたま覚えていてな」

『流石だね。そんな大昔のこと覚えているなんて、もしかして俺のこと好きなんじゃないの?』

「ああ、好きだぞ」

『……』

「俺だけじゃない、ここにいる全員、仁王ももちろん。お前のことが大好きだ。」

『………』

「ずーっと、これからも、だ。」

『…ふふ。当たり前だよ。なんてったって俺は神の子だから』

「そうだな。お前はイエス様にも匹敵する」

『これからはイエス様って呼べ』

「(イラッ…)…イエスのイ、が、いまいち発音しずらいな。エスさん、なんてどうだ」

『やだよそんな容疑者みたいな呼び方』

「ふふ。じゃあ、幸村、でいいだろう。」

『ちぇーっ…あ…。へ、へくちっ』


可愛らしいくしゃみと共に、元エスさんこと幸村は姿を消した。





………………・
成人式はなしと言う名の幸村さん死ネタ。
勝手に殺して本当に申し訳ないです

成人された方おめでとうございます
私の兄も今日成人式です(知らん

 


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