※下ネタ
※だがギャグではない






浴槽に浸かっていると、バネさんが風呂に入ってきた。

別に風呂の中でやらしいことをしようとか、
そういうんじゃないと思う。

ていうか、やらしいことをしたから、俺は今風呂に入っている。

頭も体も一通り洗い終えていた俺は、特にバネさんを咎めることもせずに、「お湯、ちょっと熱いかも」とだけ伝えた。

「ダビデ、シャンプー取ってくれ」

「え、どこ」

「知らん」

「バネさんの家じゃん」

「お前頭洗ってねえのか?俺のシャンプー使っていいって言ったのに」

「お泊まりセット」

「お前…最初っから俺んち泊まるつもりだったのか」

「うぃ」


いつの間にやらバネさんはすでに自分のシャンプーを手にとり、頭を洗い始めた。

「………」

当たり前だが、流れる沈黙。

ふと俯いて、水面を眺めていると、そこに糸くずが浮いているのが見えた。


「…精子」

「あ?なんか言ったか?」

「ううん」

浮いている糸くずが、あまりにも精子の形に似ていたものだから、思わず呟いてしまった。

「(…やばい、精子にしか見えない。)」

風呂場を洗ってお湯を入れてくれたのは、バネさんだったはず。

おそらく、バネさんの体についていた糸くずが、風呂場を洗ったときにここに落ちて、そして今に至のだろう。

「(…バネさんの精子だ)」

正確に言うと、バネさんの衣服についていた精子みたいな糸くず。

でも、一度考えると止まらなかった。

「(バネさんの、精子)」

気付くと手が伸びて、その精子を捕まえようとしている自分。

しかし、水中の小さなソレを手の平ですくおうとするのはなかなか大変で、

2、3回、するすると指の間を逃げられたがなんとか手の平に乗せることができた。

「(………)」

じっと見つめる。

これがもしホンモノだとしたら、バネさんの精子はとんでもなく大きいことになる。
でも、バネさんくらい大きい人なら、これくらいの精子、出せるんじゃないかな。

「(…これで、孕まないかなあ、俺)」

見つめながらぼんやりと考えた。

「(子宮さえあれば絶対、産めるのになあ)」

「(俺、バネさんの子なら、いくらでも産める自信があるんだけどなあ)」

それこそ、野球チームができるくらい。
あ、テニス少年が、野球チームとか言っちゃ駄目かな。
じゃあ…テニス団体戦ができるくらい。

「(長男にシングルス1をやらせて)」

「(双子も産んで、ダブルス1にしよう)」

「(ダブルス2は…年子にしよう)」

そんな下らないことを考えながら、先ほどすくいあげた精子を、
自分の心臓辺りに押しあててみる。

「(これで、孕まないかな、)」

「………………」

当たり前だが、体に変化は無かった。

「(あーあ。)」

残念。勿体ない。

俺とバネさんの子どもは、
絶対、高身長のイケメンなのに。

だって、俺とバネさんを足して2で割った子供だもん。


「(産めないなんて)」



ヤケになり、精子を丸めて、頭を流していたバネさんの背中に投げつける。

精子は一瞬だけバネさんの背中にしがみつき、すぐに流されていった。


「(流産………)」

こんな不謹慎な駄洒落を言った日には俺の命は無いだろう。マジで。

「(…優しいからな)」

流れる精子は、その存在すらバネさんに気付いてもらえていなかったので、なんとなく虚しい光景に見えた。

「(………)」

流れていく精子を眺めてると、なんだか、この想いが一方通行な気がしてならなくなった。不安で仕方なくなった。

「…バネさん」

だから。

「ん?」

突然、ぶつけてみることにした。

「俺とバネさんの子って、どんなだと思う?」

間髪入れず、返事をされた。

「産まれたときから150センチくらいあると思う。」

「え」

「お前のお腹かなりキツいだろうけど、俺も支えるから。頼むぞ」

「………」

「将来は高身長のイケメンだろーな。何しろ、俺とお前を足して2で割る子供だからな」


「………」

不安がる必要は無かったようだ。


「(…ていうか、)」

「(何この人バカ?)」

150センチって!

あ、でも俺も大概バカだよな。



とにかく俺は嬉しくて、一晩中バネさんにしがみついていた。


(あんな糸くずと違って、俺は流されないぞ)








………………・
ダビデは純情な変態


っていうか、元々考えてたラストシーン、寝て忘れてしまった…!

 


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