「ちゅどーん」
「先輩、次セーブしたら俺の番ッスからね」
「わかっちょるわかっちょる」
本当に分かっているんだろうか。以前も、そんな調子でいつまでも待たされ、気付けば全クリしていたというのに。
(俺がゲームしてる間は、仁王先輩の隣に座れるのにな)
仁王先輩がゲームをしている間は、集中できないと言われ、隣に座ることさえ許されない。床に座り、ベッドにもたれかかってテレビ画面を見つめる仁王先輩と、ベッドの上に座ってテレビ画面と仁王先輩の背中を見つめる俺。
(…なーんか、淋しすぎる)
両思いのはずなのに、俺だけが片思いしているような。100歩譲ってこれが正しい恋人の図だとして、いつまでも、この恋人の関係を続けることができる訳でもない。
(いつかは、別れる)
同性愛が認められないこの国では、俺達が結婚するなんてことできない。籍も入れないあやふやな関係は、いつか終わるに決まっている。
(別れた後、俺、どうすんだろ)
仁王先輩と別れたら、将来的には女と結婚しなくちゃいけない。
(…結婚できんのかな?)
現在進行形で恋人の仁王先輩が初めての恋人であるこの俺が、女と付き合い、女と結婚。女と暮らし、女と幸せな家庭を持つ
(…考えらんねえわ)
童貞は卒業してるのに、女の経験はまるでない。女に全く興味が無いと言えば嘘になるが、後にも先にも、女だけに夢中になれる自信は無い。
(いや…)
仁王先輩以外、夢中になれる人なんかいないんだ。つまり俺は、仁王先輩と別れたら、恋人も作らず家庭も持たず、ただのワカメになる訳だ。まあ、仁王先輩のことを一生引きずって、ワカメのようにウニョウニョ生きるのも悪くないかもしれないが。
(…仁王先輩は…)
俺と別れた後、どうするんだろう。
(モテるもんなあ。)
ルックスも申し分ないし、変装ができるだけあって、人間観察の力も半端じゃない。人の性格の特徴も長所も短所も、簡単に分かる。それらを生かして、気になる女の子を口説けば、きっと2秒で新しい彼女が出来るだろう。
(俺と違って、俺と付き合う前に彼女何人もいたし)
仁王先輩は俺と別れたら、新しく彼女を作って、暖かな家庭を作るんだろう。そして俺はただのワカメ。

「…………」
「うっしゃ、全クリ」
「え!?」
何勝手に終わらせてんの俺が続きやるって言ったじゃんセーブしたら交代って!先輩後輩なんて忘れ、タメ口の早口でまくし立てると、こう返された。
「せやけど、声かけても無視するから」
「……う」
何も言い返せない。深く考え込みすぎていた。

「それより、このゲーム全クリしたら、赤也に言おうと思っとったことあるんじゃけど」
「へ」
仁王先輩は立ち上がり、ベッドに座る俺の隣に座った。あ、隣。そんなことを考えていると、仁王先輩は俺の頬を撫で、俺の大好きな微笑みを見せた。

「赤也、好いとうよ」
「…俺もッスよ」
「愛しちょる」
「俺もです」

「赤也、将来外国で2人で暮らそうか」
「……」
えー、と。
「…プロ、ポーズ?」
今の今まで考えていた事のせいで、思考回路は、簡単にそこに辿り着く。
「よう分かったの。赤也にしては」
「え…で、でも、なんで」
「この国は不便じゃ。たまたま股間に同じものがあるだけで、籍も入れられん」
「お、俺…籍が無くても、一緒に居れればそれで」
嘘だ。同性だからって、籍を入れた恋人達の幸せを感じることができないのは、すごく嫌だ。
「わしは籍を入れたい。お前さんだってそうじゃろ。わしは、形に縋りたい。籍を入れて、赤也を正真正銘、自分のものにしたい。」

うん、そうだよ。俺も全く一緒。
「でも、せ…先輩、モテるんだから、俺じゃなくても…」
「ククッ。…赤也じゃなきゃやーだ。他の女じゃもう勃たんぜよ」
そっか、そんな風に思ってくれてたんだ。
「……っ、」
「泣くなや」
ずっと涙我慢してたんスよ、もう無理。
「にっ…にお、先ぱいっ……ぐすっ」
「はいはいはい。」
仁王先輩は俺を抱き寄せ、涙を拭ってくれた。

「で、返事は?」
「…もうどこにでも連れてって下さい…」
「了解ナリ」
どうやら俺はただのワカメになることを免れたようです。俺達は2人してベッドに倒れこんだ。







………………・
思ったよりながくなった……!!!!
なので、試しに、改行を超減らした。
ゲームの全クリと、赤也へのプロポーズを同等の扱い←



 


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