ある夜。
晩飯が食い終わったのを見計らい、俺はレギュラーの写真を持って伶奈を呼んだ。
「ちょっとこっち来い」
「ん?なに?」
「俺の友達、写真で先に紹介しとくよ。サエみたいなやつはもういないけど、全員、個性的だから…」
「あーそっか。確かに、そんなんやったら何も知らんままいきなし会うんも怖いよな」
「そうそう」
こいつは話が早くて良い。
早速写真を見せると、伶奈は真っ先に亮を指さして
「なにこの人、女?」
と聞いてきた。
*
バネさんの家に居候が来たと聞いてから、数日経った日のことだった。
「買い出しは貝と出汁…イマイチ」
じゃんけんに負けた俺は買い出しに駆り出された。
一人で行くのは寂しいけど、皆、ちょっとでもたくさん練習しなきゃだもんな。
「(俺もさっさと買い出し終わらせて。練習しなきゃ)」
それでもいつも通りダジャレを考えながら、スーパーに入る。
買い出しの内容は、もちろん貝や出汁なんかじゃない。
「アクエリ……」
勝手知ったるスーパー内を歩いて、ドリンクコーナーへ真っ直ぐ向かう。
「!」
ふと、背中に人の気配を感じた。
「(俺、邪魔だったかな)」
ただでさえでかい図体をしているからな、と、通路の端へよる。
「………?」
するとなぜかその人影は俺のあとを着いてきた。
さすがに気になって振り返ると、同じ年くらいの女の子が立っていた。
「な…なんですか…?」
恐る恐る声をかけると、
女の子は口を開いた。
「なんかおもろいこと言うてよ」
………。
「!?」
何、この子!!!
「あんたダビデやろ?」
俺が固まっていると、その女の子は俺のあだ名を言い当ててきた。
「え、あ…天根ヒカル…」
律儀に本名を言い返してみると、女の子は若干めんどくさそうな顔をした(そっちが話し掛けてきたのに!)。
「ダビデやん。ダビデやろ?あんたダジャレ言うんやろ?」
「え…えと…」
「おもろいこと言うてみいやー」
「…」
なんか怖い、この子。
とうとう俺が黙り込みを決めると、女の子は思い出したように口を開いた。
「あっ!そういやダビデ、人見知りなんやっけ…!!」
「……?」
この子はさっきから、どこから俺の情報を仕入れてるんだろう。
「ごめんな、いきなし話し掛けてもて!私、本城伶奈です」
「…………」
聞いたことある名前。
『本城伶奈ちゃん、だっけ?バネ』
この前のサエさんとバネさんの会話が蘇る。
「あ………」
「ん?」
「バネさんのとこの居候……さん?」
「あーそうそう、バネさんとこの居候さんです。同期やから、タメ語でええからね」
「あ……うん」
「このスーパー広いよなあ。ダビデ、私ハンバーグの材料買いたいんやけどさ、お肉コーナーどこやろ?」
「あっち…」
*
「お前今日、ダビデに会ったのか?」
「ん?ああ、会うたよ。情報回んの早いなあ」
「ダビデの買い出しの帰りが随分遅かったから理由聞いてたんだよ。」
「スーパーの中案内してくれてん。ええ子やなあダビデって。物静かやけど」
「アイツの人見知り直ったら、ウザイくらいダジャレかましてくるぜきっと。」
「それは楽しみや」
………………・
こんな感じで毎回一人に会わせます\(^^)/