ある夜。
晩飯が食い終わったのを見計らい、俺はレギュラーの写真を持って伶奈を呼んだ。

「ちょっとこっち来い」

「ん?なに?」

「俺の友達、写真で先に紹介しとくよ。サエみたいなやつはもういないけど、全員、個性的だから…」

「あーそっか。確かに、そんなんやったら何も知らんままいきなし会うんも怖いよな」

「そうそう」

こいつは話が早くて良い。

早速写真を見せると、伶奈は真っ先に亮を指さして

「なにこの人、女?」

と聞いてきた。




バネさんの家に居候が来たと聞いてから、数日経った日のことだった。

「買い出しは貝と出汁…イマイチ」

じゃんけんに負けた俺は買い出しに駆り出された。

一人で行くのは寂しいけど、皆、ちょっとでもたくさん練習しなきゃだもんな。

「(俺もさっさと買い出し終わらせて。練習しなきゃ)」

それでもいつも通りダジャレを考えながら、スーパーに入る。

買い出しの内容は、もちろん貝や出汁なんかじゃない。

「アクエリ……」

勝手知ったるスーパー内を歩いて、ドリンクコーナーへ真っ直ぐ向かう。

「!」

ふと、背中に人の気配を感じた。

「(俺、邪魔だったかな)」

ただでさえでかい図体をしているからな、と、通路の端へよる。

「………?」

するとなぜかその人影は俺のあとを着いてきた。


さすがに気になって振り返ると、同じ年くらいの女の子が立っていた。

「な…なんですか…?」

恐る恐る声をかけると、
女の子は口を開いた。


「なんかおもろいこと言うてよ」


………。

「!?」

何、この子!!!

「あんたダビデやろ?」

俺が固まっていると、その女の子は俺のあだ名を言い当ててきた。

「え、あ…天根ヒカル…」

律儀に本名を言い返してみると、女の子は若干めんどくさそうな顔をした(そっちが話し掛けてきたのに!)。

「ダビデやん。ダビデやろ?あんたダジャレ言うんやろ?」

「え…えと…」

「おもろいこと言うてみいやー」

「…」

なんか怖い、この子。
とうとう俺が黙り込みを決めると、女の子は思い出したように口を開いた。

「あっ!そういやダビデ、人見知りなんやっけ…!!」

「……?」

この子はさっきから、どこから俺の情報を仕入れてるんだろう。

「ごめんな、いきなし話し掛けてもて!私、本城伶奈です」

「…………」

聞いたことある名前。

『本城伶奈ちゃん、だっけ?バネ』

この前のサエさんとバネさんの会話が蘇る。

「あ………」

「ん?」

「バネさんのとこの居候……さん?」

「あーそうそう、バネさんとこの居候さんです。同期やから、タメ語でええからね」

「あ……うん」

「このスーパー広いよなあ。ダビデ、私ハンバーグの材料買いたいんやけどさ、お肉コーナーどこやろ?」

「あっち…」





「お前今日、ダビデに会ったのか?」

「ん?ああ、会うたよ。情報回んの早いなあ」

「ダビデの買い出しの帰りが随分遅かったから理由聞いてたんだよ。」

「スーパーの中案内してくれてん。ええ子やなあダビデって。物静かやけど」

「アイツの人見知り直ったら、ウザイくらいダジャレかましてくるぜきっと。」

「それは楽しみや」








………………・
こんな感じで毎回一人に会わせます\(^^)/