#ac2_total# 小説2 | ナノ

 

俺には無理なんて。



『正負の法則』



「やだぁっ…、やだってば、ん」

代わりでもいいなんて愚かなこと言ったの、今まさに後悔してる。
不二先輩と重ねられたまま自分を見られる覚悟なんてなかったくせに。でもあの時は、手に入るのならそれでいいなんて安易なことを思った。


10月になって、名前先輩から引き算された不二先輩の存在。代わりなんて簡単に務まるはずはなかった。
そもそも代わりだなんて思ってる時点で、代用品だとあっさり認めてしまっている自分が情けなくて笑える。
デートしてる時、セックスしてる時、どんな時でも名前先輩の瞳の奥に不二先輩が映ってるような気がして、苛々するっていうか不安っていうか。
…正直もう無理っぽい。


この世には正負の法則があるらしい。
誰かの不幸は誰かの幸福。過去の不幸は未来の幸福。
それは機会が巡るということ。名前先輩が不二先輩と別れたって聞いたとき、やっと俺にも機会が巡ってきたと思ったのに。




「あっ、ん、リョーマっ…」
「ねえさっきのどういうこと」
「…ん、んっ、教科書…、借りてただけっ」
「…それさあ、不二先輩じゃなきゃ駄目だった?」
「やあっ、ぁあん……ごめん…」


些細なことに情緒乱された結果、無理矢理部室連れ込んで身体にぶつけて、ホント俺ってあんたの何なのなんて胸の内で悪態をつく。

口では嫌々言いながらも、後ろからそこを突くと背中しならせて細い声紡ぐ名前先輩。
立ってお尻だけ突き出すような体制のまま、前の壁に手つかせて。短い間隔で息漏らして必死に耐えるその姿を堪能しても、なんか虚しい。
決して優しくなんてしてないのに、そこは俺のこと散々締め付けてきて、じわじわ吐精感が募る。


「ねえ、俺のこと…っ、好き?」
「…んんっ、あっ………や、」
「ねえ、好き?」
「ん、ん…好き、好きだよ…あっ」


…やっと手に入れたんだ。
こうやって精一杯踏ん張る名前先輩とか、今は、もう。全部俺のだって。
頭では分かってても、臆病の虫が心の片隅に居座って俺のこと指さして笑う。


「あっあっあ……そこ、あ、またイっちゃ、」
「ここ?」
「ああんっ……だめぇっ…」

弱いとこばっか攻めてると、お互いのものでグチャグチャになったそこが水音を立てる。
結合部からは混ざり合ったのが溢れ出てて、うわなにこれすごい妊娠しそうなんですけど。やっぱ外で出すってだけじゃ駄目だよなーなんて。


「あああああっ……っっ」

そんな無責任なこと考えながら腰振ってたら、絶頂に達した名前先輩が搾り取るみたいに締め付けてきて。
思わず声を我慢した。


「はあっ……はあ…リョーマ、もう」
「ほらまだ終わりじゃないよちゃんと立って」
「やあ…っ」

脚に力が入らないのかへなへなと俺に身を預ける先輩。
可愛いけど、まだ収まらない俺は無理矢理手を壁につかせて律動を続ける。
だって俺まだイってないし、ほらまだ全然濡れてるじゃん。


「あっ、あっ、もう無理だよぉ…っ」
「はあっ……今日何回イったっけ」
「ん、ああっ……わかんな、」
「…ね、俺のためにもう少し頑張ってよ」

そう言ってラストスパートをかけると、声にならない声をあげて中が痙攣した。


ホントに名前先輩を想うならもう手を放すべきなのに、俺の右手はその華奢な手首をグッと握りしめてて。
折れそうなほど強い力で腕を固定して更に自分勝手な性欲をぶつけながら、一生守りたいなんて矛盾したことを思った。
どうか名前先輩にとって不二先輩との別れが、俺との出逢いっていう意味のある幸福な喪失になりますように。

足りない脳味噌でそんなことを考えて、惨めな自分に涙が出そうになった。

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