やめられない止まらない。
『不健全な愛し方』
不覚だった。
自分はいつだって冷静沈着で、誰かの前で取り乱すなど有り得ないと思っていたのに。
部活中に精市が、勢いよく飛んだボールから守ろうとマネージャーの名前を抱きとめるようにかばって。二人の顔の近さと、名前の照れた表情と言ったらない。
来い、とだけ言って手を引いて、部室に連れ込んで鍵をかける。
「や、柳せんぱ…んっ」
気づけば、状況を読み込めない彼女を強く抱きしめ口づけていた。
みっともない、大人げない、分かっている。何も言わないでくれ。
付き合って三ヶ月、俺は名前に一切触れてこなかった。処女なことも分かっていたし、衝動的になって大切なものを失うことが恐ろしくて仕方なかった。
それなのに、脳裏に焼き付いた今にも重なりそうな二人の距離感が俺をこんなにも動物的にさせる。
「ふっ…ん、んぅっ…」
今まで触れるだけのキスしかしてこなかった俺が無理矢理舌を絡ませると、時々苦しそうに吐息を漏らす名前。聞いたことのない声に身体が熱くなった。
「ひゃっ…ど、どうしたんですか、あっ」
壁に押し付けた体制でそのまま鎖骨に唇を落として吸い付き、ジャージのチャックを一気に下ろす。下に着ていたTシャツに素早く手を入れ、背中に手を回しホックを外すと途端に焦り出す名前。
「やっ、先輩!部室ですよ!んっ…」
「俺も男なのでな。本当はずっとしたかった」
「でも、んっ」
その口を塞ぎ、片手で胸に触れる。先端はもう存在感を出していて、手のひらで擦ると喉の奥で細く鳴く様が愛おしい。
柔らかいその感触を確かめるように揉むと、涙目の名前。今まであれだけ我慢してたくせに、もう止まりそうにない。
Tシャツを捲り上げ、固くなったそこを口に含んだ。
「あっ、ん…っん、…ふ…」
「…可愛いな。もっと声を聞かせてくれ」
「やっ…やあ…」
俺だけが聞く甘い声。それは想像を絶するほど官能的で、三ヶ月の葛藤や、いつもの冷静さを丸ごと奪っていく。
「あっ!や、だめですっ」
ふいにジャージのズボンに手を突っ込むと、慌てたように制止してくるが、今更やめられるわけもなく。
俺はそのまま下着に手を入れた。
「なんだ。そんなによかったか?」
「ひゃっ、あっ…違いますっ」
そこは処女とは思えないほど濡れていて、脚を震わせる名前を心底可愛いと思った。
指でなぞると、扇情的な表情でいちいち敏感に反応するのが初々しい。
「あっあ、柳先輩っ…」
「蓮二。…名前で呼べ」
「んっ、ああっ……れ、蓮二せんぱ」
「気持ちいいか?」
「っ………ん、ん、あ…っ」
中指を抜き差しすると奥が収縮して締め付けてきて、さっきよりも甘い声が漏れた。
初めての感覚に戸惑っているのだろう。
困ったような顔の名前と目が合って、本能的に口づけた。
クリトリスを親指で擦りながら中指を動かすとどろどろ溢れてきて、ああもう何度夜に想像したんだろうか。目の前で涙ながらに蓮二先輩と俺を呼ぶ名前を見て、今後健全な愛し方ができるかどうか不安になった。
「やあっ…、ん」
「…名前。しっかり捕まっていろ」
ここが部室だとかそんなこと気にかけることができるほど、俺は今冷静ではない。既に俺自身はジャージの上からでも分かるほど勃ち上がっていて、早く早くと疼く。こんなに身体全体が熱くなるのは初めてだ。
自身を取り出して入口に押し当てて場所を確認する。
壁にもたれかかる名前があまりにも不安そうな顔をするからもう一度口づけて、ゆっくり突き上げた。
「ああああっ、ん」
「……っ」
想像以上の圧迫感に、俺も歯を食いしばる。まずい。腰のあたりに沸きあがる自慰とはまた違う快感。
きっと俺には想像もできないほど痛いのだろう。絡みつくようにキュウキュウ締まる中、そして俺の背中に食い込む爪。
名前の汗ばむ額をジャージの袖でぬぐい、後頭部を撫でてやる。涙目で見上げてくるその姿に、嫉妬の感情が大分落ち着いた気がした。
「…すまない、好きだ。名前」
「あっ、ん」
「お前を、他の男に触れさせたくないんだ」
「せ、先輩…ん」
セックスを教え込むようにゆっくり腰を動かす。悩ましげに吐息を漏らす表情を見て、俺しか知らない名前に心が満たされていく。
自分がこんな衝動的になるなんて思っていなかった。
俺が名前の手を引いて部室に向かった時の精市の表情を思い出して、このあと一体どんな言い訳をしようか考える。
だけどそんなさなか、蓮二先輩好きですなんて名前が言うものだから、我慢できず思い切り腰を振って欲を吐き出した。
抗いようのない愛しさに眩暈を覚えながら。