#ac2_total# 小説2 | ナノ

 

あなたにだけ見てほしい。



『赤いペディキュア』



「名前、こんなの塗るっけ」

周助がそう言って手にとったのは、チェストの上に置いてある赤いペディキュア。
レース模様が掘られた赤い小瓶は、私よりも周助の方がよく似合うと思った。


「脚だよ。手だと目立つんだもん」


そう言ってするする靴下脱いでその赤を見せつけたら、ミニトマトみたいな赤が五つ並んでる。ボルドーとかワインレッドとか?なんだかんだ濁りがあるようなあの色じゃなくて、私はこの真っ赤な色がすごく気に入ってるの。
だけど風紀委員とか生活指導とか無視できるほど腕白でもなくって、だからこうやって脚の爪にそれを乗せてた。


「いい色だね」
「ね、周助もそう思うでしょ!」

私の足元に視線を落として、首の角度を下げた周助。
さらさらとその栗色が髪のカーテンを作ったせいで表情は見えないけど、その叫ぶような赤と淡い栗色のコントラストに魅入った。

周助が飼い猫に手を伸ばすみたいに、愛し気にその爪を撫ぜる。
少し剥げたその赤をあやすみたいな手つき。
なんか、ちょっと、あれだ。


思考を読み解かれたみたいで、周助が顔あげて上品に笑った。なんだかんだその顔が一番好き。
すっとその顔が近づいてきてキスされる。触れるだけの、好きだよって言われてるみたいなキス。

靴下を脱いだ片脚だけ、骨格を確かめるように撫でられて。


「しゅ…すけ」
「何?」

至近距離で私たちの視線が交差して、また唇が重なった。
ああ本当は生理が終わったばっかだし、できれば遠慮したいのに。
周助はそんな私の理性を、キスで丸ごと奪って飲み込んだ。








終わった後に服を着せる手つきはすごい優しいんだけど、脱がす時はこうやって少し余裕なさげにするのがいい。
ほんのちょっとの強引さは、やっぱり女の子を女の子にすると思うの。


「あっ…」
「ふふ、いい?爪」

乳首を軽く爪で引っかかれて、その形の整った女の子みたいな爪で今愛されてるのかと思うと電流が走る。

簡単に下着をとられてしまったけど、それを邪魔ものみたいに扱わないで「レース可愛いね」なんて褒めてくれるところにいちいちキュンとなった。

自分のベッドなのに、こうやって周助に押し倒されると別世界みたい。
なんて思ってたらピンと立ったそこを急に口に含まれて、いつもよりずっと甘くて可愛い声を出したのは自覚してる。
だから声に反応してそうやって顔上げてくるのは止めてくれないかな、なんて。

「あっ、はあっ…」

急に?ううんホントはホック外された時から期待してたくせして。
這いまわる手に短い呼吸が漏れた。


脱がされてから、ここまで何分だろう。五分なんて絶対経ってないのに、脚の間はもう熱い。はやく、はやく。


「もう我慢できない?」

それを見透かした周助がそう言ってきて、私は素直に首を振った。こんなとき自然に目が潤むんだから、女はずるい。


パンツの上からぬるりと這った周助の指を、感じないなんてできるわけがなかった。

「んっ…」
「今日すごく濡れるね」
「やあっ…はあ…あ」

わかってる。もうこんなになっちゃってる。
ブラとられた時から私の身体を隠してたのはもうパンツだけで、こんな薄い布なんて早く取ってほしいと思うのに、なんだかんだでこれを脱がされる時はいつもたまらなく羞恥に駆られた。


「すごいんだけど」

靴下と同じようにするするパンツが足首まで落とされていって、露になったそこを見て周助が言う。

「ん、あ、ああっ」

グチュグチュかき混ぜられて、ああもうこの指を待ってたなんて絶対に言いたくない。気持ちいい。

感じるとこを指先が掠めて、下腹部が心臓みたいに脈打った。
やだやだ、クリトリスそんなにしたらまだ周助なんて何も脱いでないのに私だけイっちゃう。

「あっ、あああ、そんなに無理…っ」
「無理じゃなくて気持ちいでしょ?」
「うんっ、あっ…気持ち、いいっ。周助…」
「うんじゃあよく顔見せて」

そんなこと言って周助は、グシャグシャになった私の顔を真上から見下ろしてきた。
恥ずかしさから手で顔隠そうと思ったら、触ってるのと反対の手で止められて。
うわあ、駄目なんだよなあ。綺麗な顔してこうやって血管の浮き出た力強い腕とか。
好き。


「あっ、ああああっ、……っっっ」


結局あっという間にその指で絶頂を迎えてしまった。
まさに電気が走るみたいな。
びくびく身体が弛緩してくのが心地いい。
周助がズボンと下着を脱ぐのをポーッと見つめる。



「…いくよ」
「あっ、ああっ」
「ごめん少し痛かった?」
「…ううん平気」

呼吸整える間もなく、グッと入ってきた熱い質量。
案外こういう風に待ちきれないとこも、結構好きだ。
お互いの一番敏感なところが一つになってると思うと子宮が疼いた。


「あっはあっ、あ、あ」
「はあっ…名前」

周助がゆるゆる腰を動かして、じんわり広がってく快感。
なんだかんだエッチは、愛を育む手段になり得てると思う。
だって、ほら。ホントは今ほんのちょっとだけ痛いとか、結構呼吸が苦しいこととか。
それを気にしてくれてる周助とか、そんなの気にしないで周助の好きにしてくれていいのになんて思う私とか、馬鹿みたいだけど相思相愛なんだよ私たち。

人間大切なのは最初じゃなくて最後の人だって言うけれど、最初だって最後だって周助にしたいなんて思う私はこの人に酔ってるんだろうか。
初恋も処女も生涯も、捧げるなら全部この人にしたい。



「んっあ、あっ」

そんなこと思ったら、周助が律動を数段激しくしてきてまたやらしい声が喉から出た。
そのうち聴いてるだけで体温が上がるような水音が響く。
私の中でまた周助自身は質量を増して、内壁を押し広げるみたいにグッグッと入ってくる。
やだやだ、脳みそ溶けちゃいそう。


「しゅ、すけ…っ、今日、激しいっ」
「ふふ、だって赤い爪なんて見たらなんか興奮しちゃって」
「あっ、あ、そんな、の…っ」



そういえば、赤色には催淫効果があるとかないとか。
ああこんな些細な色素だけできっかけになるなんて、男の人には気を付けないとなあ。
とか、欲に甘んじてる私が言えることじゃないんだけど。

快感の淵でギリギリ保たれてる意識の中で、そんなこと考える。
だめだ、目がちかちかしてきた。


「好きだよ、名前」



思うことはいろいろあるけど、結局私は懲りずにまた今日、赤色を塗り直すだろう。
だってまだ肌寒いこの季節に私のペディキュアが赤くたって、そんなの見るのは周助くらいだから。

私は来たる絶頂に身構えて、愛しの彼氏の肩をギュっと掴んだ。

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